『ゴジラ-1.0』山崎貴監督に読者の疑問をぶつけてきた!背びれギミックの創作秘話から、ラストの首模様の意図まで次々回答!
ゴジラ70周年、シリーズ第30作の節目を飾った山崎貴監督作『ゴジラ-1.0』(公開中)。戦争直後の日本に出現したゴジラの恐怖を緻密なVFXを駆使して描きあげた本作は、大ヒット中の日本に加え、12月1日より全米でも公開され、全米での歴代邦画実写作品において興行収入1位という快挙を成し遂げた。 【写真を見る】Z世代のCGクリエイターが手掛けたと話題に!ゴジラと対峙する海のシーン MOVIE WALKER PRESSでは、Xにてユーザーから質問を募り、山崎監督ご本人に答えてもらう“AMA”(=Ask Me Anythingの略。ネットスラング風に言うと「〇〇だけど、なにか質問ある?」といった意味)を実施。『ゴジラ-1.0』の舞台裏やこだわり、タイトルやロゴに関する裏話からゴジラシリーズへの想い、続編についてまでたっぷりとお届けする。 ※本記事は、本編の核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。 ■「本作のタイトルバックでは、文字ではなくロゴマークが使用されていました。ゴジラに限らず、ロゴマークが映画本編のタイトルという作品はかなり珍しいと思うのですが、なぜロゴだけにしたのか理由を教えてください」(20代/男性) 「キャンペーンであのロゴを押し出していたので、映画もそのまま使ったほうがイメージが繫がるんじゃないか、ということはありました。『ジュラシック・パーク』で恐竜の化石を使った丸いロゴマークがあるじゃないですか。あのロゴみたいに、パッと見ただけで『ゴジラ-1.0』だと感じてほしくて意識してよく使っていました。 実はあのロゴ、意外な生まれ方をしたんです。現場で使うコンテを製本する時に、プロデューサーから表紙用にかっこよく『G』と書いてくださいと言われ、手近にあった紙の隅っこに書いたのがあれです。いい感じだったので送ったら、あのロゴになったという。その後、宣伝部から製作発表の時に使うビジュアルがないので、この『G』使っていいですかと話が来て、どんどん出世するなと思っていたら、最終的にはアメリカでも宣伝に使うという(笑)。最初はタイトルに使うなんて思ってもいませんでしたが、書いてみるもんだなと」 ■「監督の作品のタイトルはよく英語+日本語。なぜそういう形にしているのか教えてください。あと、今回の『ゴジラ-1.0』でそうしなかった理由も知りたいです」(30代/男性) 「あのタイトルは、阿部(秀司)プロデューサーの趣味なんですよ(笑)。『ALWAYS 三丁目の夕日』の時に、『三丁目の夕日』だけじゃ若い子が来ないんじゃないかと“ALWAYS”を付けたら評判がよかったんです。その成功体験から、阿部さんとの映画は英語+日本語にしているという。今回付いてないのは、ゴジラは阿部さんというより東宝さんの作品ですから。でも阿部さんは広瀬正さんのSF小説『マイナス・ゼロ』が大好きなので、そのあたりは少し反映されているかも知れないですね。実際はわかりませんが(笑)」 ■「山崎監督がVFXのゴジラの動きの中で一番苦労したシーン、ここは1番こだわったシーンはありますか」(30代/男性) 「ゴジラの歩き方ですね。ハリウッド版もそうですが、ゴジラの歩き方はそれぞれ特徴的で、歩く姿にどういうゴジラなのかが表れます。腰の高さが変わるだけでもずいぶん違って見えるので、しっくりくるまでアニメーターと何度も検討しました。歩き以外だと電車のくわえ方もそうですね。初代ゴジラのギニョール(※撮影用の人形)を使ったくわえ方が好きなので、自分の手で電車をくわえる動きを撮影してアニメーターに『こんな感じで』と送り、彼らなりに解釈して動かしたものをやり取りしたりしながら作りました。 ゴジラではないですが、電車に関してはゴジラがくわえている時の車内もスペクタクルになると思っていたので、そこもこだわっています。最初は電車のセットを作りたかったんですが、動く車両を作るのは予算がかかるんです。プロデューサーとのせめぎ合いをして、とにかく全部セットで作るのはやめてくれと(笑)。そこで最小限の範囲だけ車内のセットを作り、デジタルでエクステンションしました」 ■「震電がゴジラを誘導した時の農村に、昭和ゴジラの特撮セットを勝手に感じてしまったのですが、これは意図的にやっているのでしょうか?」(20代/男性) 「やっぱり昔の『ゴジラ』とか、もしかしたら『ウルトラマン』に近い印象なのかもしれないですけど、特撮セット的な農村の風景はよく出てきたんで、なにか入れたかったんですよ。最初は『シン・ウルトラマン』のデータを利用できないかなと思っていたんですが、現代の風景であることやデータ自体が凄まじく重たくて。実際の作業を考えた時に、ロケ地をドローンで何回も飛んでもらって、写真をたくさん撮ってから構築する方法で作りました。ただ細かいところはうまくいかなくて、木を植えたりする作業が必要だったのですが、予定にない作業なので担当する人がいなくて…。結局僕が勉強して木を植えられるようになりましたね(笑)」 ■「大戸島のゴジラは人間に噛み付いていましたがすべて吐き出していました。このゴジラは肉食ではないということなのでしょうか」(30代/女性) 「ゴジラが人は食べないというのは一種の決まりごとみたいになってますし、東宝さんのレギュレーションにもあるんです。じゃあどうやって演出するか、ということからの逆算ですね。踏みつぶすとか尻尾で吹っ飛ばす手もありですが、もっと凶暴にしたかったんです。残虐な生き物なんだということを表現するため、あのシーンを入れたということです。それともう一つ、人を食べると急に獣になっちゃうんですよ。僕のなかでゴジラは動物ではなく“荒ぶる神”であるという部分があるので。じゃあなにを食べているのかと聞かれると困りますが、少なくともマグロじゃないのは確かです(笑)」 ■「今回のゴジラの魅力の一つでもある背びれ放射熱線のギミックはどういう経緯で思いついたのでしょうか」(20代/男性) 「これはインプロ―ジョン方式という原子爆弾の爆発の仕方を参考にしています。基本的な原理は、少し離れたところにある核物質を一気に凝縮させて、臨界点に達したところで爆発するというものなのですが、こういうガシャンって一つに集まるイメージが欲しかったんです。今回のゴジラは滅多に熱線を吐かないので、その前に予備動作というか儀式を盛り上げるような要素を入れたくて。いろいろ考えた結果、今回のだんだんと背びれが上がっていくギミックを思いつきました」 ■「本作では伊福部昭の音楽が印象的に使われていますが、その中に『モスラ対ゴジラ』の『マハラモスラ』や『キングコング対ゴジラ』の『ファロ島の祈りの歌』が含まれているのは、どういう意図でしょうか?」(40代/男性) 「画に合っていたからで、曲が持っている背景を背負っているわけではないんです。もともと既成曲を使わせていただく話はしていたんですが、この曲を入れたらどうなるだろうと思ってやってみたら曲調が画のタイミングとぴったりで。伊福部さんの曲なので音楽自体は一切いじっていないんですが、恐ろしいくらいハマったということです」 ■「ラストの浜辺美波の首にあった模様はなんですか?」(20代/男性) 「明言は避けたいと思いますが、なぜ典子はあんな目に遭っても死ななかったのかということですね。最後に敷島を典子と会わせてあげたかったんですが、いかにも的なハッピーエンドにはしたくないので、ああいう形で典子を生かしたと。やっぱりゴジラが戦争や核の象徴である以上、死にはしませんでしたがこの先幸せだけが待っているわけじゃない。ハッピーエンドは嫌だけど、バッドエンドにもしたくないという着地点です」 ■「歴代ゴジラシリーズの中でどの作品がお好きですか?ベスト3あたりまでお教え頂きたいです!出来ればその3作品に対する思い入れ等も!」(40代/男性) 「初代『ゴジラ』と『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(GMK)』、『シン・ゴジラ』ですね。初代はしっかりした人間ドラマがあるし、ゼロからゴジラを生み出しているところもいいですね。なによりすばらしいと思うのはドラマとゴジラのバランスで、あのドラマがなかったら成立しない作品になっているところです。『GMK』は映画として観て、普通に怪獣が怖い。怖いゴジラはいいなと素直に思いました。『シン・ゴジラ』は衝撃的でしたね。現代で『ゴジラ』を作るならこれが正解というか、最適解だと思いました。いまの時代ならではの問題やメンタリティがちゃんと描かれていて、ほんと衝撃的でした」 ■「先日トークショーされていた金子修介監督もそうですが、少年映画が上手な監督は怪獣映画も上手なイメージです。山崎監督が考える両者の類似性、実際に作って感じたことを教えてください!」(30代/男性) 「ジャンル映画というのはある意味、子ども的な感性が必要ということだと思います。我々のような監督は向いているんだと思います」 ■「『鵺』(監督デビュー作として『ジュブナイル』の前に企画していたSF映画)はいつやりますか?ストーリーとかキャスティングの構想とか、教えてください」(30代/男性) 「やろうと思ったらお金がかかるし、オリジナルのSFファンタジーはリスクが高いのでなかなか難しいですね。いろんな意味で大変な作品なので、情熱があるうちにやらなきゃとは思っていますが。予算的な面だけでなく、いま自分であの企画をリクープできるか考えるとどこまでイメージが沸くだろう、ということもあります。生涯『諦めたわけじゃない』と言い続ける気もしますが、『鵺』に限らずオリジナルのSFファンタジーをやる手段はないかと色々と考えてはいます」 ■「山崎貴監督作品が大好きで、特に『リターナー』は、私が映画好きになったきっかけの一つでした。いまの最新技術で過去作のVFXを作り直したり、『リターナー』の続編やオリジナルのSFアクションを制作する構想はありますでしょうか?」(20代/男性) 「初期の作品を好きでいてくれる人たちがいるのは、本当にうれしいしありがたいですね。過去の作品に関しては、やはり当時のものという考えがあるので、いまVFXを作り直したいと思うことはないです。ただ、最近発掘された僕の学生時代に作った自主映画が、思い出補正があったのかいま観るとひどくて(笑)。これはVFXでガッツリ直したいですね(笑)。 『リターナー』の続編は、もう歳を重ねちゃったからなあ…。でもまたSFアクションを撮ることもあると思うんですが、『鵺』や『リターナー』の続編かどうかは別にしてオリジナル作品を増やしていきたいという想いはあります」 ■「もし再びゴジラ映画の監督を務める機会があるとしたら、『ゴジラ-1.0』の続編か、それともまったく別のゴジラ映画のどちらを撮ってみたいでしょうか。『ゴジラ-1.0』が公開されたばかりで気が早いですが、今後も山崎監督のゴジラを是非観てみたいです。よろしくお願いいたします」(30代/男性) 「いまの正直な気持ちを言えば、僕としてはあの人たちの続きの話が観たいですね。もし作れるなら、彼らがその後どうなっていくのかそこを絡めた映画にしたいと思っています」 取材・文/神武団四郎 ※記事初出時、登場人物の表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。