業界揺るがした「自動車認証制度不正」指摘されたモデルオーナーは乗り続けて大丈夫? 露呈した制度の問題点とは
国土交通省(国交省)は6月3日、トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、本田技研工業、スズキの5社で型式指定申請における不正行為があったことを公表した。多くの自動車メーカーが不正に手を染めていたことは大きなインパクトをもたらしたが、それとともに「なぜいま」の疑念の声もあがった。 【表】各メーカーの不正の有無を記載した国交省の資料 発端は、2023年12月、ダイハツ工業が過去20年以上にわたり140件を超える「型式指定申請における不正行為」を発表したことである。この時の同社の不正の判明に合わせ、国交省は他の自動車メーカーや装置メーカーに同様の不正をしていないかを調査確認するよう指示を出したのだ。 その報告が2024年5月にあり、今回の一斉発覚に至っている。ヤマハ発動機については同社のスポーツバイクに関する不正であるため、本記事では乗用車4メーカーについて解説する。(自動車コラムニスト:山本 晋也)
新車販売への影響は
スズキとホンダについては販売終了モデルにおける不正だったことから、新車販売への影響は最小限となっている。 一方、マツダは2車種、トヨタは3車種の販売中のモデルに関する不正が判明、現行モデルは出荷停止となっている。トヨタについては調査継続中であり、今後さらなる不正が発覚する可能性はゼロではない。 また、他の国産乗用車メーカーである日産、スバル、三菱自動車について、今回の調査では不正はなかったという。
「型式指定申請における不正行為」とは
そもそも「型式指定申請における不正行為」とは何なのだろうか。 自動車ユーザーであればご存じの通り、日本の公道を走るにあたり定期的に“車検”を通して、保安基準を満たしているかを確認する義務が課されている。通常、新車購入時には車検は不要で、乗用車の場合は新車から3年目、その後は2年毎に車検が必要となるが、原則的なルールとしては新車時にも車検が必要な建付となっている。 しかし、メーカーが製造したばかりのクルマをいちいち検査するのは無駄だ。そこで国交省に「型式指定」を申請、取得することで新車時の車検を省くという運用をしている。それが「自動車認証制度」といわれるものだ。 自動車メーカーは国交省が定めた方法に則り、衝突安全性や排ガス浄化性能、騒音規制への合致などの試験を行い、その数値をもとに型式指定を申請する。そうして型式指定を取得することで、新車時の車検を省ける運用なのだ。 自動車認証制度は、自動車メーカーの工場から出荷された段階であれば車検を通さずとも公道を走行できる状態であることを認める制度であり、型式指定を取得することは実質的に新車販売をするために必須といえる。 なお、ダイハツをはじめ各メーカーの不正について“認証不正”と表現する報道も見かけるが、これは型式指定申請に必要なデータを集める作業である認証試験で起きた問題ということ、そして自動車認証制度に関する不正であることを意味している。