【第75回全日本大学バスケットボール選手権大会】「ゆるくバスケをしたかった」はずが ── 東海リーグ1部昇格で再燃した全国への情熱(愛知大学 松下茉奈実)
初出場だった昨年の活躍により「マークがきつく来ているかな?」
インカレ(第75回全日本大学バスケットボール選手権大会)女子トーナメント表を見て、第1シードの白鷗大学が陣取る左上のグループステージ(ブロックA・B)の6チーム中、5年連続15回の出場を誇る新潟医療福祉大学を除き、いずれも2度目の全国の舞台に上がった。静岡産業大学こそ3年ぶりだが、聖カタリナ大学、八戸学院大学、広島文化学園大学、そして愛知大学は昨年が初出場だった。 1度経験したことをもとに、「相手はすごく身長が高くて、リバウンドで結構やられてしまった部分がありました。今年のチームも高さがない分、全員でボックスアウトの徹底や粘り強いルーズボールの練習をしてきました」と話すのは、愛知大学 #7 松下茉奈実である。 初戦は経験豊富な新潟医療福祉大学を相手に81-69、続く八戸学院大学戦も92-75で2連勝し、昨年果たせなかったグループステージ突破を決めた。初戦は20点・12リバウンド・4スティール、2戦目も15点と二桁得点をマークした松下は、今年も変わらぬ得点力でチームを引っ張る。 昨年の初戦は広島文化学園大学を110-93で下し、松下は25点を挙げ、上々のインカレデビューを果たした。「初出場ということもあり、そこまでマークもきつくはなかったので、落ち着いてできていました。でも今回は、ちょっと焦りもあってミスが増えてしまったので、もう少し落ち着いてプレーできれば良かったなと思います」と2度目の初戦を終え、反省点を挙げる。昨年の活躍も少なからずスカウティングされており、「マークがきつく来ているかな、とは感じます。それでも自分のやるべきことは変わらないので、必ず点を獲りに行くことを意識していました。また、自分のマークがきつければ、味方を生かすプレーができればいいとも思っています」と言うとおり、チーム全員がステップアップして臨んだことで、昨年とは違う結果が得られている。
1部に上がって気持ちが変わり、真剣に練習したことで上がった得点力
2年前、愛知大学は東海リーグ2部におり、いくら勝ってもインカレへの出場資格はなかった。岐阜商業高校出身、全国大会出場経験のある松下は「そこまでレベルの高くない愛知大学で、ゆるくバスケをしたかった」と入学当初の正直な気持ちを明かす。東海はもとより、全国の強豪校から選手が集まっている愛知大学。ルーキーシーズンの昨年、東海リーグで見事1部リーグ昇格を決めた。 情熱を傾けすぎれば、その反動で冷めてしまうのも致し方ない。だが、松下も他の愛知大学のメンバーも、バスケ愛は冷めていなかった。負けず嫌いが復活し、1部を主戦場とする昨年からインカレ出場へと方針を変え、1年目でその切符を手にする。 「いざ、大学バスケでプレーしていくうちに物足りなさも感じていました。1年のときに1部に上がったことで気持ちが変わり、真剣に練習していくうちに自分の得点力も上がっていきました。それがモチベーションにもつながって今があると思います」 2年連続2回目の大舞台だが、1年ぶりの初戦はさすがに緊張していたそうだ。代々木第二体育館での新潟医療福祉大学戦はスタメンの名前が呼ばれ、一人ひとりコートに入っていく。いの一番に名前を呼ばれた松下だが、「選手入場のようなことがはじめてだったので、どうして良いか分からなかったです」と、どこまでコートに入って良いのか迷っていた姿が初々しい。しかし、プレーがはじまれば、物怖じすることなく積極的にゴールを狙う。昨年感じた全国大会の楽しさや悔しさを糧に、この1年間練習してきた成果を2度目のインカレにぶつけている。 「自分の持ち味はドライブであり、それがあるこそのスリーポイントなので、もっとチームに影響を与えられる選手、得点を取りに行くところにもっとこだわってがんばりたいです」 得点力が魅力の松下だが、跳ねるようにドリブルを突く身体能力の高さは、元富士通レッドウェーブ、3×3日本代表として東京オリンピックに出場し、5人制でも日本を代表した篠崎澪さんのプレースタイルにどこか似ていると感じた。次戦は12月6日 10:30より、シードで待つ松蔭大学と対戦する。そう、篠崎さんの母校と相まみえるのも、何かの縁かもしれない。 「今まで関東のチームと対戦したことがなかったので、もちろん強いのはわかっているからこそ、今の自分たちの力を試すチャンスでもあります。どんな相手でも挑戦者という気持ちは変わりなく、全力で力を試す意味でも対戦してみたいです」
泉誠一