新木優子「人は1人では生きられない」感情揺さぶるサスペンス作品で感じた愛のカタチ:インタビュー
新木優子が、Amazon Original 映画『不都合な記憶』(9月27日からPrime Videoで配信スタート)に出演。伊藤英明演じるナオキの妻、マユミを演じる。本作は、日本アカデミー賞で最多8冠を獲得した『ある男』の監督・石川慶がメインキャストに伊藤英明と新木優子を迎え、脚本・監督を務めるサイコパスサスペンス・ロマンス作品だ。舞台は西暦2200年、人類が宇宙に移住し、科学技術が進化して記憶の操作が可能になった近未来。ナオキは理想の夫婦関係を追求するあまり、妻をアンドロイド化し、“不都合な記憶”を消して何度もリセットして、“完璧な結婚生活”を手に入れようとする。映画は、日本映画の枠を超えて“愛の形”を描く。インタビューでは、共演した伊藤英明から感じた芝居の凄みや、無重力空間を再現するためのワイヤー撮影の裏側、そして本作を通して感じた人間の感情について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】 【写真】新木優子、撮り下ろしアザーカット ■表現が究極のところに達している ――伊藤英明さんが演じるナオキは過剰な愛情といいますか、狂気的な部分もありますが、これほど人を愛せるというところに関しては、すごいことだなと思いました。 傍から見たらすごく情熱的ですし、素敵だなと思うのですが、マユミ当人からしてみたら行きすぎた愛情は怖いと思います。伊藤さんも本気でぶつかってこられて、猟奇的な部分の表現が、究極のところに達しているなと感じました。 ――リアルな怖さがありました。 マユミとしてナオキと接していて怖かった部分もたくさんありましたし、全ての感情がとてもリアルだったと思います。逆に楽しさを感じるシーンは本当に楽しくて、きっと皆さんにも観たままの感情がリアルに伝わる作品だと思います。 ――楽しいシーンは新木さんと伊藤さんもナチュラルで、本当に楽しそうだなと思いました。 例えばハネムーンで自転車に乗ったりするシーンは、積み上げてきたものが関係性として表れている、すごくナチュラルな2人だったと思います。 ――クランクイン前の準備としてはどのようなことを? マユミは職業が陶芸家なんです。宇宙に移住してからも趣味として続けているのですが、 陶芸の練習をしっかりやりました。また、宇宙なので無重力空間での撮影シーンもあったので、 そこでの体勢の作り方など、ワイヤーに吊られながら頑張りました。どういう風にすれば無重力空間っぽく見えるのか、たくさん練習しました。 ――すごく無重力感ありました!「おおっ!」と思いながら作品を観ていたのですが、やはり撮影は大変だったんですね。 そう言っていただけて嬉しいです。本番もワイヤーにずっと吊られながら数日かけて撮影したので、体力的にも大変でした。過去にワイヤーを使った撮影経験はあったのですが、宇宙空間という設定は初めての経験でした。 ――ところで陶芸の練習をされていて、陶芸に興味が湧いたりしました? もともとお皿、器が好きなんです。実際に体験してみて、人によって作るものが変わってくる、作り手による作品の違いをすごく感じました。また、先生に教えてもらいながら、自分でもちょっとずつできるようになっていく過程もとても楽しかったです。 ■伊藤英明から刺激を受けた役との向き合い方 ――共演した伊藤英明さんから、インスピレーションをもらったり、刺激を受けたりされましたか。 私が物心ついた時から様々なドラマや映画作品に出演されていて、 ずっと活躍されている大先輩ですので、今回共演させていただいてたくさんの刺激をいただきました。1番は役との向き合い方でした。すごい集中力で役と向き合っていらっしゃる印象で、自由でありながらも、ご自身のことをすごく理解されながら演じていらっしゃると感じました。感情の出し方が本当にすごかったです。 ――どのようなタイプの役者さんだと思いましたか。 伊藤さんがナオキを演じている姿を観て、ナオキ自身になっている、言葉で表現するのがとても難しいのですが、それは今まで自分の中にはなかった領域で、自分に取り込める部分は取り込もうと思いましたし、とても勉強になりました。 ――伊藤さん、オンとオフのギャップがすごそうですね。 おっしゃる通りで、オフの時の伊藤さんは本当にユーモアがあり明るい方です。大人で紳士的なんですが、少年らしい一面があったり。無邪気さと紳士さ、どちらも持たれている方だったので、カットがかかった後は、今回の役とのギャップがすごくありました。 ――さて、新木さんがこの作品から感じたメッセージは? 人は1人では生きられないというのをこの作品から感じました。おそらくナオキも1人で生きていたら、ああいう人になっていなかったんじゃないかと思います。マユミがいたからこそ、ナオキの危ういところ、猟奇的な部分が芽生えてしまったんだと思います。良くも悪くも、人の感情の中で自分1人で起こせるものはすごく限られていると思います。相手がいることで感情が揺さぶられるんだとこの作品を通して改めて実感しました。 ――確かに感情とういうのは誰かが引き出してくれる面が強いです。 相手がいるからこそ、自分が大切にしているものがわかったり、そういうきっかけにも繋がりますし、何事も1人では限界がすぐに来てしまうと思います。自分が生きている意味など、もしかしたら1人だと見つかりにくいのかなと思いました。ナオキとマユミ、2人の関係性からとても学びがありました。 (終わり)