習近平政権の「歴史的な住宅市場救済策」が空振り…ついに最終局面を迎える中国不動産価格崩壊の「深刻な実態」
再生の起爆剤と期待されたが
5月17日、中国政府は総合的な「不動産支援策」を発表し、それが即時の実行となった。それは、下記の内容のものである。 【写真】中国の実態は大経済都市「魔都」上海の凋落にすべてが表れている 1.各地方政府が民間業者から売れ残りの住宅を「適正価格」で購買することを認める。地方政府によって買い取られる住宅は低家賃で人々に提供する方針である。 2.住宅ローン規制の緩和、住宅ローン金利と頭金比率の引き下げ。 3.国有企業による住宅購入の支援。 以上の三つの柱からなる支援策は性格上全部、政府による「住宅販売促進策」であることは一目瞭然であろう。つまり、住宅が徹底的に売れなくなって、不動産市場が半ば崩壊している状況下で、中国政府は乾坤一擲の救済策を打ち出した訳である。 不動産開発業が事実上中国経済の3割程度を作り出して「中国経済の支柱産業」となっている中では、不動産市場の崩壊はそのまま「支柱産業」の崩壊と中国経済そのものの崩壊を意味するから、「経済よりも政治」の習近平政権はやっと重い腰を上げて不動産救済に乗り出した。 それに対し、中国国内メデイアは一斉に歓声をあげ、一連の政策措置を「40年来最大の緩和策」、「歴史的な振興策」、「中国の不動産市場がもう一度の春を迎える」と高く評価している。そして日本を含めて海外でもそれが「中国経済回復の起爆剤となるのではないか」と大きな注目を集めた。 しかし、全国ですでに34億人分の住宅が出来上がって不動産市場が重度な過剰在庫を抱える中で、前述のような救済策はまさに「焼け石に水」であって大きな効果が期待できないのに決まっている。
住宅販売の邪魔をしただけ
その一方、救済政策の一番の柱となる「地方政府による住宅の買い上げと低家賃の賃貸提供」は逆に、住宅の「販売促進」とは正反対の「販売阻害」にもなるのである。 このような政策が施行されると、住むために住宅購入を考える多くの人は当然、「どうせ政府がこれから低家賃で賃貸住宅を提供してくれるなら、高いローンを組んで住宅を買わなくて良い」と思うようになって購買をやめてしまう。そして政府による低賃金の賃貸住宅提供が当然、住宅全体の価格下落につながると思われるから、値上がりを期待して投資・投機のために住宅を購入しようとする人々の多くもまた購買を放棄することとなろう。 つまり、不動産市場の活発化を狙う「救済策」の思惑とは裏腹に、上述の政策措置は逆に、購買意欲を削ぐことによって不動産市場のさらなる沈没をもたらす以外にない。習近平政権のやることは何もかも、ただの頓珍漢である。 そして6月になって出回った、5月の不動産市場の販売実績を示す一連の数字を見ると、前述の「販売促進策」は微々たる効果しか持たずにしてほぼ完敗に終わっていることは分かる。 6月2日、克而瑞研究センターが発表した数字では、今年5月、中国「百強房企(売上高上位百位の不動産大手)」の販売総額は3224.1億元であって、前月比では3.4%の微増となっているが、前年同月比では33.6%減。不動産市場の縮小は依然として継続中であることはよく分かる。