映画「夜明けのすべて」さらにハマる… 主演の松村北斗さん・上白石萌音さんと監督の「副音声」とは
映画のバリアフリーのためのサービス
元々「UDCast」は、視覚や聴覚に障害がある人に向けた映画の音声ガイドやバリアフリーの字幕を利用したり、バリアフリー上映の作品を検索したりできるサービスを提供しています。 「夜明けのすべて」も音声ガイド、バリアフリー字幕の上映があります。 アプリを運営する「Palabra」の山上さんは、三宅監督の前作でろう者の女性ボクサーの実話を元にした「ケイコ 目を澄ませて」(2022年)の音声ガイドとバリアフリー字幕の制作などを通じて三宅監督と交流してきました。 「夜明けのすべて」の音声ガイドやバリアフリー字幕制作にも三宅監督は「映画の仕事として当然のようにかかわってくれた」そうです。 副音声コメンタリーについて、山上さんは「フィルムでの撮影や光へのこだわりなど、三宅監督の映画への真摯な向き合い方が伝わってきます。上白石さん、松村さんと監督とのお話から、作品への愛情の深さが伝わってくると思います」。 また、「映画など作品によって障害の描かれ方はさまざまですが、『夜明けのすべて』は障害者としてではなく、一人の日常に寄り添って表現されていること、演じた2人が身近な友達のことを話しているかのように藤沢さん、山添くんのことを話す様子が素敵ですね。作品を通じてより考えるきっかけにもなるのではと思います」。
「鑑賞の選択肢広がり、観客増にも」
副音声コメンタリーの取り組みは、2018年にヒットした映画「銀魂2 掟は破るためにこそある」(監督・福田雄一)で「UDCast」の音声ガイドや字幕の機能を使った取り組みとして初めて提供されました。 元々、ブルーレイなどパッケージ化された際の特典としてつけることが一般的だった副音声コメンタリーを、上映中に届けることができるようになりました。 副音声コメンタリーを通じてアプリをインストールする人が増えることで、Palabraが取り組む「映画のバリアフリー」が知られることにもつながると山上さんは言います。 「副音声も、バリアフリーも、映画の一つのみかたとして普通になってほしい。鑑賞の選択肢が広がり、観客が増えることにつなげたいです」 改正障害者差別解消法の施行で、4月1日からは障害者が社会生活を送る中での社会的障壁を取り除くための「合理的配慮」が民間事業者にも義務づけられます。 一方、音声ガイドやバリアフリー字幕を利用できる映画作品は一部にとどまり、映画の予約や映画館の設備などのバリアフリーも途上です。 山上さんは「コンテンツも、コンテンツの周辺の映画へのアクセスについても映画界が前進することが必要です。義務でなく、創作活動の延長としてバリアフリーに取り組んで、誰もが文化芸術を共有できるようになってほしいです」と話します。 「夜明けのすべて」の副音声コメンタリーや音声ガイドは、アプリを使って、上映している全国の映画館で利用できます。 スマホやタブレットのマイクで拾う映画の音響と連動してアプリで音声を再生するそうで、上映中は機内モードに設定しても楽しめるそうです。