葛西敬之が率いる「JR連合」vs 松崎明が牛耳る「JR総連」...「動労の連中とは決別しよう」JRの未来をかけた「熾烈な」争い
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第29回 『JR全体を乗っ取る陰謀⁉...「脱税から横領まで」革マル派・松崎明の黒すぎる「真の」狙い』より続く
「動労の連中とは決別しよう」
時を同じくして、JR総連では旧国労組合員の扱いを巡り、旧動労系と旧鉄労系の労働組合の意見対立が顕著になっていく。それは、1047人の国労組合員の再雇用問題の対処にもくっきりとあらわれた。前に書いたように旧動労の松崎が委員長を務めるJR東日本のJR東労組は、「分割民営化を妨害した国労組合員の再採用反対」を打ち出した。 本州3社のうち、JR東日本の松田昌士がこの松崎の主張に応じたかっこうだ。それに対し、JR東海の葛西やJR西日本の井手正敬らは再雇用の受け入れを表明した。つまり、松崎の主張を受け入れるかどうか、東京を境にして東日本地域と西日本地域とで対処が異なる結果となり、それが労働組合の活動にも影響をおよぼした。 松崎らに対する旧鉄労の反発はJR総連の発足直後から始まった。初代会長となった鉄労出身の志摩はまず、JR東日本常務の松田に旧鉄労がJR総連から脱退する意向を告げ、さらにJR西日本副社長の井手に会った。87年6月のことだ。志摩は言った。 「俺たちは松崎と手を切るために、旧動労との連合を止め、鉄道労連(JR総連)を飛び出したい。松崎と組むのではなく、鉄産労(旧国労主流派)と組みたい。実はこのことは東日本の松田にも相談し、了解を取ってある。井手さんも賛成してくれないか」