パチンコ業界が独自に取り組む「社会貢献」 熱中症予防“クーリングシェルター”利用は進むか?
「要請受け協力」実際の店舗の様子は…?
実際に「酷暑避難場所」の取り組みに協力している店舗のひとつ、東京都葛飾区のダイナム金町南口店を訪れた。同店HPには全日遊連が作成した「暑い日はお気軽に涼みに来てください!」と書かれたポスターが掲載されている。 店内は涼しく、また禁煙(喫煙スペースあり。一部フロアは加熱式との分煙)となっており、トイレや荷物の置けるロッカーなども整備されていて、暑さをしのぐための環境が整えられていた。 また、パチンコホールといえば、騒音が気になる人も居るかもしれないが、店内で広報担当者に取材をしていても、相手の声が聞き取れる環境だった。 ダイナムの広報担当者は、「酷暑避難場所」としての施設の提供について、「店舗の負担が増えたり、お客さまへのご迷惑となることはないと判断して、全日遊連の要請を受けて協力する流れとなりました」と説明する。 では実際に、「酷暑避難場所」として利用している人はどの程度いるのか。 同担当者は「涼みに来られた方か、遊技をしにきたお客さまかを区別することはなかなか難しい」とした上で、「お客さまから『涼みに来た』という声を聞くこともありますし、休憩スペースのある店舗では、実際に涼まれている方の姿を見かけることもあります」と語った。
パチンコ業界への「制限なし」だが課題も…
施設の整備が整っているように見えるが、多くのホールでクーリングシェルターの指定が進まない背景には、どのような事情があるのだろうか 環境省は自治体に向けた手引きの中で、クーリングシェルターを指定する際に、施設が満たすべき必要最低限の条件を公開している。 「適当な冷房設備を有する」「当該施設の存する区域に係る熱中症特別警戒情報が発表されたときは、当該施設を住民その他の者に開放することができる」、「住民その他の者の滞在のために供すべき部分について、必要かつ適切な空間を確保する」ことなどが挙げられている。 クーリングシェルターの指定基準について、前出の熱中症対策室の担当者は「温度を何度以下に保つなど具体的な数値の条件は設けてない」としつつ、次のように説明した。 「環境省としては、特定の業界・業種はクーリングシェルターとして指定してはならないといったことは示していません。パチンコホールをクーリングシェルターに指定するかどうかは各自治体の判断になるかと思います。 自治体側からも『パチンコホールや競馬場といった施設を指定してもよいか』という問い合わせがありましたが、『環境省としては制限していない』と伝えました。 ただ同時に、パチンコホールや競馬場、あるいは一部の老人ホームなどにも該当しますが、そもそも施設に入場できる年齢に制限がある場合、家族など年齢差のあるグループが涼みに訪れた場合にどう対応するのかについては、自治体と施設で事前に考えてほしいとも伝えました」 実際、愛知県でパチンコホールを運営する有楽グループでは、一部の店舗が全国のパチンコホールとしては初めて、クーリングシェルターとして指定を受けたが、18歳未満は原則利用できないとしている。
普段からトイレなど提供「遊技する方も、されない方も…」
自治体によるクーリングシェルターも、パチンコ業界独自の酷暑避難場所の設置も、今年から始まったばかりの施策だ。 前出のダイナム広報担当者は以下のように話した。 「来年どのような取り組みを実施するかは現段階では未定ですが、現状『酷暑避難場所』の取り組みとして行っている、空調の効いた、清潔で過ごしやすい空間の提供というのは、従来より店舗で実施していたことです。 トイレや喫煙所なども提供していますので、遊技する方はもちろん、普段ホールを利用されない方にも、休み場所として気軽にご利用いただければと思います」
弁護士JP編集部