絶望、諦め…難病“重症筋無力症”で歩行困難、目も不自由に 「怒りや不安、失望も自分の一部」60歳の節目に自分と向き合い300キロ「信濃三十三札所巡り」
■絶望、諦め…心に平穏を取り戻したい
10年に及ぶ闘病生活。60歳を前に、西沢さんは、心に平穏を取り戻したいと考えるようになりました。 西沢昌信さん: 「病気ばっかりしている自分に腹が立った。この先どうなるんだろうという強い不安、怒りと不安。本を読むのが好きだったが、ほぼ絶望的、残念さと諦め。いろいろな感情がぐちゃぐちゃになっている、かなり混乱しているというところで、なんか落ち着くことをやってみようと」
ふと、思い出したのが職場の先輩が行った四国八十八カ所の「お遍路巡り」。「自分も、県内でできる『札所巡り』をしよう」と思い立ちました。 「信濃三十三観音札所巡り」は北は飯山、南は伊那の観音菩薩を祭る33の寺を参拝する旅。江戸時代の初めごろから続いています。 西沢さんは家族やヘルパーの協力を得て、2023年4月にスタート。電車やバスでその市町村まで行き、寺までは徒歩という形で参拝を重ねてきました。
■歩きを支えるのはヘルパー
いよいよ残り3カ所となった札所巡り。10月20日、西沢さんたちはバスなどで西山地域へ。 最初に到着したのは三十一番・長野市中条の広福寺です。 参拝の証し・御朱印をもらいます。
西沢さんと知り合って4年になるヘルパーの倉島晃さん(69)。障害物や階段などを知らせ、西沢さんの歩きを支えてきました。 ヘルパー・倉島晃さん: 「普通何もなければ思い立ったらできるはず、当たり前のことが当たり前にできて。それが社会じゃないかと常々思うので、一緒に私でよければお付き合いしますよと」
三十二番に向かう前に食堂で腹ごしらえ。 住民とも交流します。 住民: 「(寺を)回ってみようと思ったのですか」 西沢昌信さん: 「そうです、面白そうじゃないですか」 住民: 「近くにあってもいかないですよ」 西沢さん: 「もったいない」
再び歩いて、三十二番・西照寺。
■歩いた距離は約300キロ
いよいよ最後、三十三番の高山寺へ。 これまでに歩いた距離は約300キロ。直線距離で長野から神戸までに匹敵します。 高山寺で最後の参拝―。 西沢さん: 「よっしゃー」