「魂の殺人」性犯罪防止へ 愛媛の塾はどう取り組む? 元女性刑事が教える家庭での対策は?
学習塾の講師による女子児童の盗撮や教員のわいせつ行為など、教育現場で子どもが性被害に遭う事件が相次いでいます。子どもに接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する新たな制度「日本版DBS」の導入に向け、政府も動き始めました。 同様の事件を防ごうと、愛媛県内の学習塾では積極的に対策を講じているところもあります。大学、高校受験などに対応する松山市の塾「fit」を取材しました。 また性犯罪は顔見知りによるケースが大半を占め、男子の被害者も少なくないといわれます。犯罪に巻き込まれないために家庭でできることについて、愛媛県警の元警察官で防犯アドバイザーのなかしまちはるさん(39)=松山市=に聞きました。(原田茜) ◆スマホの教室持ち込みは禁止 松山市大街道2丁目などで集団・少人数授業を展開しているfit。小学生から高卒生のコースに約600人が通っています。計11カ所ある教室は授業中も室内の様子が確認できるよう、仕切りやドアを設置していなかったり、スタッフが常に巡回したりしています。 講師はアルバイトを含め約40人が在籍し、氏名と顔写真をホームページ(HP)に公開。スマートフォンは教室への持ち込みが禁止されているため、スタッフ待機室で預けます。 ◆誓約書も提出 「盗撮などの性犯罪だけでなく、生徒へのボディータッチや個別対応時の距離感まで指導を徹底してきました。ただ近年は教育現場での性犯罪が多く起きていて、業界全体への不信感が高まりかねないと心配しています」。fitグループ代表の田尾昭憲さん(48)が話すように、子どもが被害者となる事例は後を絶ちません。 保護者に少しでも安心してもらおうと、fitでは2023年11月、塾内の対策をまとめた文書をHPに公開。各教室への防犯カメラの設置も新たに検討しています。講師には採用時などに、性犯罪をしないことや違反金について誓約する文書を提出してもらっていますが、「それでも100パーセント安心とは言い切れない」と明かします。 こうした中、日本版DBS創設法案が3月、閣議決定されました。学校や保育所などに確認を義務付け、学習塾などは任意の「認定制」とします。 田尾さんは「日本版DBSは必要な取り組みで、認定制度に参加したいと考えています。今後も対策を見直しながら強化していきたいです」と力を込めます。 ◆家庭では何ができる? 「実は性犯罪は顔見知りによる加害が8割、被害者は男子も4割を占めています。子ども自身に自分の体を守る知識を身に付けてもらいたいです」 こう話すのは性犯罪担当の刑事として被害者に向き合った経験がある、なかしまさんです。子どもの素直さにつけ込んだ犯行に胸を痛めてきました。 なかしまさんは自分自身で守るべき場所について、胸やお尻、性器といった水着で隠れる「プライベートゾーン」を挙げます。「他人に見せても触らせてもいけないし、他人のプライベートゾーンを触ってもだめだということを保護者がしっかりと伝えてほしいです」と強調します。 少しの異変に気付くためにも、日ごろから親子のコミュニケーションを深めておくことが大切です。「性犯罪は魂の殺人といわれ、被害者の心身へ大きな影響を与えます。誰でも巻き込まれる可能性があり、家庭でも意識を高めてもらいたいです」
愛媛新聞社