クルスク州のロシア軍、架橋がますます困難に 砲爆撃に加えドローンも食らう
川への架橋は軍事作戦において最も難しい任務のひとつだと考えられている。ウクライナ軍もこれが難題であることをよく知っている。南部のヘルソン州で、ロシア側に支配されているドニプロ川左岸(東岸)へ渡るのに難渋し、成果に乏しいからだ。 他方、ロシア軍もここ数週間、自国内で同じ困難に直面している。ウクライナ軍の侵攻を受けた西部のクルスク州を流れるセイム川に架かっていた橋を、補給路遮断のためウクライナ側に砲撃などで破壊されたあと、浮橋(ふきょう、ポンツーンブリッジ)を設けるのに苦労しているのだ。ロシア軍はここへきて、それがますます難しくなっていることに気づきつつある。ウクライナ軍が高性能なドローン(無人機)でも浮橋や架橋部隊を攻撃してくるためだ。 川への架橋や渡河の難しさには複数の要因が絡んでいる。まず、川はそもそも、強い流れや深い水深、不安定な岸辺などによって天然の障害物になっている。また、トラックや装甲車などの軍用車両が通行できるほどの耐荷力のある橋を設けるには、特殊な技能をもつ工兵部隊が必要になる。 しかし、真の困難をもたらすのは対岸の敵である。対岸側を敵軍に押さえられている場合、架橋作業を行う際に露出した格好になる工兵部隊は直接照準射撃にさらされる。対岸を自軍が確保できても、敵の前進観測者は脆弱な橋に対して砲撃を誘導できるだろう。 また、架橋に成功しても、架けられた橋はチョークポイント(難所)になる。適切に連携した行動をとらなければ、そこを渡ろうとする車両は攻撃を受けやすい。事実、この戦争でもロシア軍が2022年5月、ウクライナ東部を流れるシベルシキー・ドネツ川を浮橋で渡ろうとして、1個大隊戦術群全体を失う大損害を被っている。 これらの困難にもかかわらず、各国の軍隊は敵対的な状況下で仮設の橋を構築する訓練を徹底的に行い、専門の工兵部隊がわずか数時間で橋を渡せるようにしている。架橋後は、各部隊が連携していわゆる「渡河(ウェットギャップ・クロッシング)作戦」を迅速かつ効果的に実行することになる。 こうした戦術は架橋任務に対する伝統的な脅威に対しては有効だが、ドローンによる攻撃に対しては非常に脆弱であることが明らかになってきている。ウクライナ軍の対架橋作戦にドローンが組み込まれたことで、ロシア軍が軍橋を設置して保持することは不可能に近くなりつつある。 ウクライナ軍はドローンによって、従来の直接照準射撃や間接照準射撃では得られない能力をいくつか獲得している。まず、ドローン、とくに徘徊するタイプのドローンによる攻撃は、砲撃よりも命中精度が高い。また、ドローンで橋を攻撃する場合、部隊は橋に接近しなくてよいので、敵の火力にさらされるリスクも減る。