九州王者の熊本国府が甲子園初出場初勝利「あの回を抑えて楽しくなった」左腕の好投&「武器」の堅守光る【選抜高校野球】
◆第96回選抜高校野球大会1回戦 熊本国府2―1近江(10回サヨナラ)(18日・甲子園球場) ■「楽しくなった」左のエースがピンチでK斬り【動画】 初出場の熊本国府が甲子園に大きな一歩を踏み出した。春夏通算24度の甲子園出場を誇り春夏とも準優勝の経験がある強豪近江を相手に1―1のまま延長に突入。タイブレークとなった10回、1死満塁から相手のバッテリーミスでサヨナラ勝ちを決めた。 ミスによる決勝点だったが、がっぷり組んだ四つ相撲で我慢して最後に相手をうっちゃった戦いぶりに「これしかうちは勝てない。守りで無駄な点をやらない展開。描いた通りの展開になりました」と山田祐揮監督は満点の試合展開に大きくうなずいた。 背番号10の左腕の植田凰暉(3年)が大舞台で最高の投球を見せた。8回に救援登板すると最大のピンチを迎えた。1死一、三塁からのスクイズを外すまではよかったが、飛び出した三塁走者をアウトに取れなかった。「普通ならそこで植田が崩れてしまうところ」という山田監督の不安をよそに、植田は後続の2人から連続三振を奪ってピンチを切り抜けた。「最初は緊張したけど、あの回を0点に抑えたのが自信になって楽しくなりました」と山田監督の予想を越える投球で「左のエース」が勝利への道をつないだ。 無死一、二塁でスタートした10回にも先頭打者のバントを三塁に送球して走者の進塁を阻止。その後の打者を併殺に仕留めて無失点に抑え、その裏のサヨナラ劇につなげた。「チームにしっかり流れをつくって勝利をつかむことができました」と聖地のマウンドで最高の働きを見せた。 相手エースから14三振を喫しても勝てたのは持ち味の強固な守備があったから。練習時間の8割を守備にあてて守備強化を図った成果が出て、1―1の緊迫した展開でも好守備で投手をもり立て、甲子園初戦を無失策でしのいだ。「投手を中心にしっかり守ろうという練習をしてきた。練習したことがこんなところで出せたのはうれしい」と山田監督。この日、遊撃で再三の好守備を見せてチームを救った遊撃の山田颯太(3年)は「自分たちの武器である守備で勝てたので自信になります」と笑顔を見せた。 夢の聖地で強豪を相手にもぶれずに自分たちの野球を貫いた昨秋の九州チャンピオン。2017年に4強入りした秀岳館以来となる春の勝利を熊本にもたらしたナインは九州大会優勝、初の甲子園出場、そして甲子園初勝利と次々に記録をつくってきた。もっと先へ。熊本国府の歩みはさらに続きそうだ。(前田泰子)
西日本新聞社