350億円以上の巨額不正…カルロス・ゴーンが繰り返し犯していた“私的流用”の深すぎる闇
ゴーン氏らによる一連の不正規模は350億円以上
ケリーについても海外関連会社を通じて受領した報酬の非開示などの開示義務違反があったと認定している。同報告書で最も重要といえるのは次のくだりである。ここに引用しておきたい。 「有価証券報告書における開示を回避しつつゴーンが受領しようとしていた報酬は推定で総額200億円以上に上り、しかもその一部はゴーンに支払い済みである。また、役員報酬の名目以外にゴーンが日産に現に不正に支出させ、あるいは支出させようとしていた金額は少なくとも合計150億円に上る。以上のとおり、ゴーンらの一連の不正の規模は全体で約350億円以上という極めて巨額のものとなる」 日産は2020年2月12日、ゴーンの不正行為によって損害を与えられたとして、ゴーンに100億円の損害賠償を求めて横浜地裁に提訴した。 「罪である」というゴーンの主張に同調する専門家もいる。しかしながら、それは最初の逮捕、起訴事案である「金商法上の所得開示義務違反」に当たるか否かという点で議論が分かれているにすぎない。当のゴーンが国外に逃亡してしまったため、金商法開示義務違反の共犯であるケリーの裁判だけが開かれ、そこから進展していないのが現状だ。 そのため所得開示義務違反に関する専門家の議論ばかり取り沙汰されてしまいがちだが、外部弁護士を含めた調査では、ほかにも経費の濫用など多くの不正行為が確認されている。ルノーにおける不正行為も含め、ゴーンの不正は議論の余地のない事実である。
西川 廣人/Webオリジナル(外部転載)