苦難のシーズンを終えた横浜ビー・コルセアーズ、主将の森井健太が抱く思い「歩みを止めなければ絶対にやり返すチャンスはくる」
「『ここで決められたら痛い』というところで決め切る力をつけないといけない」
この点について聞くと、森井はこのように語る。「青木(勇人ヘッドコーチ)さんとは新潟の頃からの長い付き合いで、『苦しい状況でコートに出すことになっていつも申し訳ない』と言ってもらっていました。試合ごとに出るタイミングは違い、出るメンバーが固定されなかったのはゲームを作る上で難しいです。僕は周りの4人を動かして、彼らの良さを引き出すのに長けているタイプだと思うので、活路を見出せない時は正直ありました」 だが、常に打開策を模索し続けたからこそ「自分自身がクリエイトした時の方がうまくいったこともあり、そこは新たな気付き、勉強になったと思います」とさらなるステップアップへの収穫も得られた。「正直、僕は20点、30点を取るような選手ではないので、得点量産が自分自身の殻を破ることではないです。接戦での終盤など、相手にとって『ここで決められたら痛い』というところで決め切る力をつけないといけない。それができている試合はウチが勝つ試合が多いです。大事な場面でプレーを遂行する力を高めて、もう1つ上のステップに行くことを意識したいです」 チームのために尽くすのが選手に求められる役割である一方、1人のプロ選手としてスタッツを残せるかどうかは、自身の評価に少なくない影響を与える。そんな状況でも、森井は周りを生かすスタイルを追求し続けた。そこはリーダーとして、チームファーストを体現し続けることで、チームを正しい方向に導いていきたい強い思いがあったからだ。「勇輝という優れた選手がいることで、僕自身のパフォーマンス以外の要因で出場時間が減るのは分かっていました。でも、出たらやれると思っていましたし、それを証明できている試合はありました。自分が出た時に100%、120%のプレーを見せることで、出番がなくて苦しんでいた若手に感じとってほしい。自分のため、チームのためにもポジティブに振る舞うようにしていました」 このようにチームへの高い忠誠心を持ち、コート内外で献身的な振る舞いを続けてきた森井にとっても、チャンピオンシップを逃すことが決まった後は「昨シーズンに出場したからこそ、今年はCSが出られないと決まった後、僕自身もメンタルにきました」と苦しんだ。 だが、それでもチームのため、何よりも変わらず声援を送り続けてくれたファンのためにハードワークを続けた。その日々は、これからの成長の糧になると森井は信じている。「数年前のビーコルだったら最高勝率を目指そうというレベルだったのが、今は目指すところが変わりました。だからこそ、引き続き戦う姿をファンの方に見せる責任があります。この1カ月は一番苦しかったですが、この経験はこれからのキャリアに生かされていくと思います」 そして森井は、次のように今シーズンを締め括った。「結果が全てなので、もっとできたという気持ちはあります。ただ、歩みを止めなければ絶対にやり返すチャンス、上にいけるチャンスは来ると思います。自分自身にもっとベクトルを向けて、チームを目標達成に導ける選手、リーダーになっていきたいと思います」 『歩みを止めなければチャンスはくる』は、それこそ昨シーズンの横浜BCが証明している。1年前とは正反対の強い逆風の中、どんなに辛くても前に進み続けた森井の努力が、新シーズンにどんな成果をもたらすのか楽しみだ。
鈴木栄一