【社会人野球】ドラフト解禁となる大卒2年目にプロ入りを目指すJR東日本・高山陽成&海崎雄太
かけがえのない二人の恩師
攻守の中心選手として期待されているが遊撃手・海崎雄太(法大)である。1月4日。練習始動日のミーティングで宣言した。「入社2年目ですが、チームをけん引していく自覚を持ち、声がけをしていきたいと思います」。今季から主将が入社3年目の山内慧(専大)となり、サポートする姿勢を示したのだった。 海崎にはかけがえのない二人の恩師がいる。中学時代に在籍した大野城ガッツ・藤田正美監督(故人)からは「野球を通した人間形成」を学んだ。高校入学に際しては、藤田氏と法大OB同士で、九州国際大付高の監督時代からつながりの深かった若生正廣氏(故人)が指揮する埼玉栄高に進学した。ここでも、野球の技術以前の礼節を徹底され、人としての基盤が磨かれた。技術的な部分では「バント、走塁、カバーリング。試合に臨むにあたっての9カ条は今も、野球選手としての原点です」と、基礎基本がたたき込まれている。 プロ注目右腕・米倉貫太(Honda→Honda熊本)とともに、福岡から勝負をかけたが、3年間で甲子園の土を踏むことができなかった。若生氏の教えが正解であったことを証明するため、進学した法大では身を粉にして動いた。鉄壁の守備力を武器に東京六大学リーグ戦に49試合に出場して25安打、1本塁打、14打点。4年時は副将を務めた。 「幼少時からプロ野球選手の夢を持っていましたが、現実的なものとして、考えるようになったのはJR東日本に入社して以降です」 法大時代は「守備の人」のイメージが強かったが、社会人では「打てるショート」としての評価を高めている。JR東日本で抜本的に打撃を改良。石川修平コーチ(法大)との二人三脚でスイング軌道を修正すると、実戦で結果が出た。1年目からレギュラーに定着。都市対抗予選では4試合で7打点を挙げ、14年連続出場に貢献した。4強に進出した本戦では全4試合に先発出場も1安打。「対応力に欠け、引き出しの少なさから、工夫することができなかった」。守備面では準決勝で対戦したトヨタ自動車の二遊間(二塁手・佐藤勇基、遊撃手・和田佳大)の精度の高さに衝撃を受けた。「守り勝つ野球を体現しているチーム。1対3というスコア以上の差を感じた」。2年目は守備のさらなる強化をテーマに掲げ、打力アップにも努めている。 「何としても、このチームで勝ちたい。まずは3月のスポニチ大会を取りにいくことは、チーム内でも浸透しています。全員の熱い思いを結集させれば、実現できる」 海崎は勝負を決める場面で存在感を発揮したい一方で「影でチームを勝たせられる選手になりたい」と、進塁打など、攻守において「これがあったから勝てた」と、記録に表れない細かいプレーで尽力していきたいという。「チームが勝ち上がっていけば、自ずと結果はついてくる」と、遊撃手部門での社会人ベストナインを虎視眈々と狙いに定める。 JR東日本に愛着がある大卒2年目コンビ。2人がチームの空気を変え、2011年以来2度目の都市対抗制覇、黒獅子旗を目指す。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール