「植田不況」の始まりか? 繰り返される日銀の失敗…植田総裁の「仰天発言」の中身とは
マーケットを驚愕させた植田和男日銀総裁の記者会見
8月5日、日経平均株価は4451円28銭下落。1987年のブラックマンデーの翌日に記録した下げ幅を上回る過去最大の暴落となった。7月11日の高値からは1万円以上下落したことになり、世界的な株安につながっている。この下げの主因は日銀の利上げだが、マーケットを驚愕させたのは、植田和男日銀総裁の記者会見だった。専門家が解説する。 【衝撃!】1ドル=140円になったら…『S&P500』『オルカン』は「円高」になったらどのくらい ◆植田日銀総裁の「仰天発言」とは 7月末に開かれた金融政策決定会合で、日銀は政策金利を0~0.1%から0.25%へと引き上げた。このタイミングでの利上げ自体、金融市場の想定外であったが、本当のサプライズは会合後の記者会見での植田総裁の発言だった。「(日銀の)経済・物価の見通しが実現すれば、それに応じて、引き続き政策金利を引き上げる」と述べたのだ。 なぜ、これが〝問題発言〟なのか? それは、日銀の経済・物価見通しを読むと分かる。記者会見と同時に、日銀は『経済・物価情勢の展望(’24年7月)』を公表。そこに、「2024~2026年度の政策委員の大勢見通し」という資料があり、日銀の政策委員の実質GDPと消費者物価指数の予測値(対前年度比)が並んでいる。 実質GDPの予測の中央値は、 ’24年度+0.6%、’25年度+1.0%、’26年度+1.0%。消費者物価指数は’24年度+2.5%、’25年度+2.1%、’26年度+1.9%となっている。これらの予測値は、特段、変わったものではない。主要なシンクタンクの経済予測をみても、ほぼ似たり寄ったりの数字が並んでいる。だが、それ故に大きな問題となる。 ◆植田総裁の〝タカ派〟転向で政策金利は「来年末に1%へ」 先の植田総裁の発言は、「この平均的な予測どおりに日本経済が推移すれば、利上げを続けていく」という宣言になっているからだ。利上げの発動条件のハードルは極端に低くなってしまった。しかも、過去30年間、超えることのなかった政策金利0.5%という水準を〝壁〟とは考えていない、とも述べている。 金融政策当局が将来の金融政策の方針を事前に表明することを『フォワード・ガイダンス』というが、とんでもないフォワード・ガイダンスをブチ込んできたといえる。 これを受け、株式市場や債券市場の金利見通しは、大幅な修正を迫られることとなった。現状のシナリオは、’25年末までに0.25%の利上げを2~3回実施するといったもので、2回であれば政策金利は0.75%に、3回なら1%に到達することになる。 金融政策当局者に関して、金融緩和に積極的な人を〝ハト派〟、金融引き締めに積極的な人を〝タカ派〟と呼ぶことがある。植田総裁は、これまでハト派だとマーケットは受け止めていたが、完全なタカ派に転向したようだ。