「家立ち退いたのに…」リニア開業7年以上先ってどういうこと? 静岡以外でも次々起きる問題、住民に不信と憤り「負担さらに増す」
長野県内区間、長期化するトンネル工事
長野県内区間を含むリニア中央新幹線の開業時期が、少なくとも7年は遅れる見通しとなった。JR東海は静岡工区の着工遅れを理由に挙げるが、県内の工区でも残土置き場の確保のほか、南アルプスを抱える下伊那郡大鹿村でトンネル掘削が予定通りに進んでいない。立ち退きを余儀なくされた飯田市の県内駅計画地の住民は憤り、残土運搬ルート沿線の住民は工事長期化への不安を強めている。(川浦風太、伊藤翔和、伊沢智樹、佐藤勝) 【動画】リニア関連工事で起きた生コン洗浄水流出、記者が撮影した問題の現場
「工期守ってと再三お願いしてきたのに」
リニアのトンネル掘削が進む大鹿村。3月21日のリニア連絡協議会で、JR東海は長野工区と青木川工区で掘削が遅れ、2026年11月末までとした村内工事の完了は間に合わないと認めた。 村内では今も、1日当たりダンプカー数百台が村外へのアクセス道路を往復。村民の間では工事による水源への影響も懸念されている。 「26年11月末までの工期は守ってくださいと、再三お願いしてきた」。この日、あと7年は開業が遅れると知った村観光協会長の平瀬定雄さん(55)は「どういうことか」とあきれた。「JR東海はいつ県内工事が完了し、村の負担はなくなるのか、具体的に理由や時期を説明し、情報を公開するべきだ」と強い口調で求める。 同村の土屋道子さん(72)はリニア連絡協議会を傍聴するために毎回足を運ぶ。「孫の物心がついた頃からリニア工事が続いている。このままだと、孫は故郷の風景としてリニア工事を思い浮かべるようになる」。水源への影響の懸念や残土処理にも触れ「静岡の問題だけにせず、一度立ち止まって事業を考え直す必要がある」と指摘する。
残土運搬、度重なる計画変更に不信感増幅
下伊那郡阿智村では清内路地区の坑口「萩の平非常口」から約70万立方メートルもの残土の発生が見込まれる。 このうち半分ほどを運び込む置き場の候補地を巡り、同地区自治会は昨年、埋め立てに反対する要望書を村に提出した。工事用資機材や残土の運搬に関する度重なる計画変更や、地元の意向との食い違いが、JR東海への不信感を増幅させた。 「地元に寄り添っていない姿勢が遅れの原因の一つではないか」と同地区自治会長の男性(75)。「工期が長引くことで村民の負担がさらに増すことになる」と危惧している。