「家立ち退いたのに…」リニア開業7年以上先ってどういうこと? 静岡以外でも次々起きる問題、住民に不信と憤り「負担さらに増す」
築10年の家「なぜ手放さなければならないのか」
リニア計画で立ち退きが相次ぐ飯田市の県内駅計画地とその周辺。宮下泰広さん(71)は同市上郷飯沼の北条地区から南条地区に転居を余儀なくされた。転居前の家は築10年ほどで、「なぜ手放さなければならないのか」と無念だった。
「地域を元気にしてくれる」期待あったが
リニアは飯田下伊那を元気にしてくれる―。そんな期待があったから立ち退くことにした。だが、労災事故を積極的に公表しようとしないJR東海の姿勢に憤りを感じたこともあった。27年のリニア開業断念を受け、「延期で余裕ができるなら(労災事故などを)しっかり報告すべきではないかと思うし、飯田市も駅周辺整備計画を時代に合った形で練り直したほうがいい」と話す。 「桑畑が広がっていた50年以上前の寂しい風景に戻ってしまった」。飯田市上郷飯沼の北条地区に住む竹内宏之さん(70)は造成工事の遅れから、8~9月ごろに座光寺地区に転居する予定だ。周辺は立ち退きが相次ぎ、自宅からは天竜川対岸の下伊那郡喬木村が見通せる状況。「開業が延期となっても、慣れ親しんだ地元がにぎやかに発展してほしい」とせめて願う。
「開業は問題を解決してから考えて」
飯田市では住宅地の真下でトンネル掘削が行われる計画だ。「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」代表世話人の北林強さんは「住民の中には自宅が傾かないかなど不安を抱え、家屋調査を申し込んでいる人が少なくない」と口にする。 県内駅計画地の橋りょう工事では、流出防止策を施した上で要対策土を活用する計画もある。北林さんは「地域では問題が次々と起きている。まずは問題を解決した上で、開業を考えるべきだ」と指摘した。