「人生は180度変わった」東京ヴェルディとブラジル人GKの運命的なめぐりあわせ【英国人の視点】
26日に行われたJ1昇格プレーオフ準決勝でジェフユナイテッド千葉に2-1で勝利した東京ヴェルディは、16年ぶりのJ1復帰に王手をかけた。ヴェルディのゴールマウスを守るマテウスは、決勝が行われる国立競技場に運命的なめぐりあわせを感じつつ、「罠にかかってはいけない」と注意を促す。(取材・文:ショーン・キャロル)
●J1昇格へあと1歩の東京ヴェルディ 今週末に行われるJ2昇格プレーオフ決勝は、本当に華やかな場となるための条件がそろっている。 東京ヴェルディと清水エスパルスは、Jリーグの「オリジナル10」のうちの2チームというだけでなく、今季のJ2リーグで、両者は自動昇格を決めた2チームに続く最上位チームでもある。ヴェルディは2023シーズンを3位で終え、エスパルスは4位。両者はわずか1ポイント差でシーズンを終えた。 さらにこの一戦は味の素スタジアムではなく、国立競技場で開催される。より壮大で、クラブの歴史を考えればよりロマンチックな選択となる。谷口栄斗は、15年ぶりのJ1復帰のチャンスを楽しんでいるという。 「勝ってしっかり(J1昇格を)決めたい」 ヴェルディのセンターバックは、26日のJ1昇格プレーオフ準決勝でジェフユナイテッド千葉に2-1で勝利した後にこう語っている。 「清水はタレントが揃っていますし、J2の中で一番強いチームと言ってもいい。そういうチームに勝たないとJ1(昇格)はないので、しっかり勝って上がりたい。この状況を楽しんでいるので、そんなにプレッシャーは感じていない」 GKのマテウスは、乾貴士、同胞のチアゴ・サンタナとカルリーニョス・ジュニオがいる清水の攻撃陣がヴェルディに厳しい試練を与えることは承知している。それでも、谷口と同様、ヴェルディが仕事を成し遂げられると確信しつつも、シーズン最終節で自動昇格を逃した清水がよりプレッシャーを感じているのではという見方を否定した。 ●「罠にかかってはいけない」東京ヴェルディに鳴らす警鐘 「数字の上では、彼らがJ2で最高の得失点差を持っている」と、王者・町田ゼルビアと並ぶリーグトップの得失点差44をシーズンで叩き出した相手について語った。 「つまり、両チームにとってかなりタフな試合になるということです。今日(千葉戦)のように、細かいところで決着がつきそうだ」 「今日までやってきたことはすべて終わった。90分ですべてが決まるわけだから、彼らが私たちよりもプレッシャーを感じることはないと思う」 「チームは上昇気流に乗っていると思う。我々は11試合も負けていない。勢いはあると思うし、引き分けでもいいわけだから」 実際、ヴェルディは8月26日に味の素スタジアムで行われたファジアーノ岡山戦の後半に3点を失って3-2で敗れて以来、敗北を味わっていない。一方、清水はここ8試合で3勝、ここ4試合で1勝しかしていない。その中には、第42節のアウェイでの水戸ホーリーホック戦(1-1)、先週土曜日のプレーオフ準決勝でのホームでのモンテディオ山形戦(0-0)が含まれている。 上位チームのヴェルディにとっては引き分けさえすればいいため、若干のアドバンテージはある。ただ、マテウスはこの一戦に向けて、選手たちがそのことに気を取られてはいけないと主張する。その代わりに、そのアドバンテージを補うために自分たちの攻撃という武器に集中するように促す。 ヴェルディにとって準決勝のジェフ戦は同じようにアドバンテージがあった。その一戦に向けて、マテウスはチームにこのようなことを言っていたという。「週の初めから、私はみんなに対して、『引き分けでもいいんだという罠にかかってはいけない』と話していた。我々にはこのチャンピオンシップで最高のディフェンスがある」。 「そのような(引き分けでもいいという)考え方で入るのはかなり危険な罠なので、私はゴールを決めることをかなり強調して伝えていた。我々にはアドバンデージがある。うちが1点、2点を入れたら、彼らが逆転するのはほぼ不可能になる」 ●マテウスの「人生は180度変わった」経験 ヴェルディ在籍4シーズン目となるこのブラジル人選手は、Jリーグ草創期にヴェルディが日本サッカー界に残した足跡を熟知している。 「歴史はすべて知っている。今週、インタビューに答えたんだけど、このクラブに対する僕のイメージは、ここに来たときに感じたイメージとはまったく違っていた。壮大な歴史を私は知った。この国で最も大きなクラブで、人々はJ2の中堅チームに慣れるのではなく、当時のマインドを取り戻さなければならないと思った。私にとっては不条理なことです」 「初日からそれが私の考え方で、うまくいっている。些細なことから始まり、それが積み重なっていく。いいところがたくさんできているし、それを見せられていると思う」 この試合がナショナル・スタジアムで行われるという事実も、30歳の彼を興奮させている。 2022年6月の日本代表との親善試合を前に、セレソン(ブラジル代表)の練習に参加する機会を得たことで、マテウスの「人生は180度変わった」という。「代表での練習に参加した2週間後に城福さんが来てくれて、自信がついたし、すべてが変わった。その後、何かスイッチが入ったんだ」。 「とても大きな試合なので本当にうれしい。このスタジアムに真の東京ヴェルディが戻ってくることは、何年も前から始まっていたことなのかもしれないね。だから、この機会にとてもよく合っていると思います」 谷口もこれに同意する。現在のヴェルディの選手たちは、30年前のカズやラモス瑠偉、北澤豪との思い出の横に新たな歴史を加えることで、国立競技場で眠れる巨人を起こそうとしている。 「ヴェルディとしていろんな歴史が国立競技場には刻まれていると思うので、そういう場所でまた新しい歴史を動かせるような日にしたい」 (取材・文:ショーン・キャロル)
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