政見放送を“有料化”せよ! 選挙の“売名プラットフォーム化”に警鐘…選挙事情に精通する弁護士が「ルール改正」を緊急提言
”異常事態”に選挙に精通する弁護士が改正を提言
<人民による、人民のための政治>。民主主義の基本だ。生活や社会をよくしていくために、国民の意見を反映する代表を選ぶ。それが選挙の目的だ。その門戸はオープンになっているが、だからこそ、立候補者には大きな責任が伴う。 「選挙は規模が大きくなればそれだけ注目度も増して、影響力も肥大します。正しく選挙システムが機能していれば相乗効果になりますが、昨今は明らかにこの影響力をビジネスや売名に”悪用”する者がいます。簡単ではありませんが、いよいよこうした歪みやエラーに対処していく必要性が出てきたと強く感じます」と語気を強めた三葛弁護士は、選挙の”ルール改正”を提言した。 具体的には、 (1)選挙ポスターの最低限のルール設定 (2)供託金の増額も含めた強化 (3)政見放送の実費請求 の3つだ。 (1)は、ポスターの掲示枠を提供した党候補者側が候補者でない寄付者のメッセージを記載したことを問題視。少なくとも、氏名や顔写真等の大きさを選挙公報のように指定することで候補者が誰かわかり、誰のメッセージかがわかるようにするなどのルールを設け、そこをクリアすることなどを条件とするというもの。 (2)は現在、都知事選では300万円となっているが、「できることが多い割に安すぎる」(三葛弁護士)ため、増額や問題発生時のペナルティーの創設などで、安易な立候補をけん制するというもの。 (3)は現在、公選法では「公益のため」(150条1項)という名目で、「無料で放送する」となっている政見放送の実施をについて選択制とし、実施する場合には実費相当額を供託金に上乗せして実質的に実費請求するというものだ。
SNS浸透で変質した情報伝達で現行制度にきしみ
長年、選挙に内外から携わってきた三葛弁護士は危機感を募らせる。 「本来、なにも規制せずに健全かつ民主的な選挙が実施できるしないことが望ましいあり方です。しかし、ルールの穴を突き、そこに選挙の趣旨と逸脱するような行動をする者が出てきています。明らかにシステムにひずみが生じているといわざるを得ず、自浄作用が機能するよう、すぐに修正をしなければなりません」 いわゆる泡まつ候補と呼ばれる、知名度や基盤の弱い候補者でも、そこに生活や社会をよくしようという志があれば、支持する有権者も現れよう。だが、女性の半裸のポスターを張り付けた候補者は、警察の警告にあっさり引き下がり、ポスターをはがしたという。単なる売名行為だったことは明白だ。 また、ポスターの枠を事実上販売するような手法は、当選を目指し戦うという選挙制度への冒涜とも言える。 SNSの浸透で、個人が発信力を持ち、どんな考え・思想でも拡散できる道は拓けた。そうした中で醸成された、プラットフォームによる拡散という売名の方程式。規模の大きな選挙が、拡散プラットフォームとして格好のターゲットとなる現状の選挙ルールが過渡期を迎えていることは間違いない。 東京都知事選挙きょう21日から期日前投票もスタート。各自治体の施設や商業施設など約 310カ所で順次実施される。
弁護士JP編集部