中国・車椅子で8万2千キロを旅した男性
【東方新報】車椅子は、6年間で8万2000キロを踏破した55歳の張戟(Zhang Ji)さんには、何の障害にもならなかった。上海市在住の彼は中国全土の450か所の革命を記念する場所を旅した。 張さんは「人は困難を恐れて前進と探求を止めることはできません」と話す。 1969年生まれの彼は、遺伝的な原因で6歳の時に、2500人に1人が罹患するという末梢神経に損傷が起こり手足の筋力低下や感覚の低下などが起こる「シャルコー・マリー・トゥース病」を発症した。 彼は病気を負いながらも、幼い頃から感動的な物語に触れてきた。「父はよく、ヘレン・ケラー(Helen Keller)のような障害者の伝記を読ませてくれました。私は自分でもそのような本を探して読み、ますます自信を持つようになりました」と昔を振り返る。 実は張さんの亡き母も遺伝性疾患を患っていたが、母の人生経験は彼に重要な教訓を与えた。高校教師だった母は、上海模範工の称号を3度獲得した。母を見て育った彼は「身体は病気に苦しめられても、心は太陽の光で満たされていなければならない」と信念を持っている。 彼は歴史への情熱から、やがて全国の革命史跡を訪ねることを思いついた。そして、支えてくれる妻を伴って、17年にこの野心的な旅に乗り出した。 自身のカメラで撮影した全ての訪問先の4万枚以上の写真の中から、500枚近くを選び、「前へ」というタイトルの自費出版本を出版した。 筋力低下のため、時には鼻でカメラを支え、まだ少し力が入る右手中指でシャッターを押すこともあるという。 「なぜ携帯電話を使わないのか、奥さんに助けを求めないのか」という質問に対し、彼は「ファインダー越しの遠近感が好きなのです。写真撮影は表現の一つだと信じていますから」と答えた。 17年と18年の「世界ALSデー(筋萎縮性側索硬化症の日)」に、張さんは自身の写真作品とコレクションを寄付した。その収益はALSコミュニティのケアに使われた。また、今年は上海の「徐家匯(Xujiahui)街道図書館」に自身の蔵書を寄贈した。 「人生はあまりにも短い。私たちは視野を広げ、自分自身を豊かにする必要があります。万里を旅し、万冊の本を読みましょう」、張さんはこう話す。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。