ネットで誹謗中傷した理由、2割強「相手が悪い」 加害者は3%未満 調査会社が実態調査
博報堂とマクロミルの合弁会社で、市場調査などを手掛けるQO(キューオー)は、インターネットの誹謗中傷に関する実態調査の結果を公表した。誹謗中傷をしたことがあると答えた人は3%に満たない一方、4割近くが見聞きしたと回答。ごく少数が加害者となり、多くの第三者が傍観している実態が浮き彫りになった。専門家は事業者への削除依頼や公的機関の相談窓口の活用といった対処方法を呼び掛けている。 【チェックリスト】項目の合計が4つ以上の場合「スマホ依存の疑い」 調査は今年9月26日から30日までインターネットで実施し、全国の18歳から69歳までの男女3800人から回答を得た。 特定の人物や団体に対して、誹謗中傷をしたことがあると、加害経験を回答した人は2・8%。人から誹謗中傷をされたと被害者になったことがあると答えたのは9・7%だった。 37・6%が誹謗中傷を見聞きしたことがあるとしたが、そのときの気持ちは「生きづらい、いやな世の中になった」が76・8%と最も高く、「自分も投稿する際は気をつけよう(75・1%)」「面倒くさそうなので関わりたくない(70・4%)」と回答した。一方で、誹謗中傷にいいねや拡散したことがあると答えた人は3・7%、誹謗中傷に賛同するコメントや投稿をしたことがある人は3・4%にとどまった。誹謗中傷に接した第三者は嫌気しながらも傍観している人がほとんどで、ごく一部の加害者の声が他人を傷つけ、社会問題化している現状が鮮明となった。 誹謗中傷の理由は「相手が間違っている、悪いと思った」と「腹立たしかった」が23・1%で最も高く、個人的な正義感や一時的な感情で行動している。誹謗中傷の対象は人間関係や芸能人、政治的な意見に対するものから、恋愛やスポーツなど、幅広い範囲に及んだ。 ■ネットで嫌な思いし攻撃的に 国際大グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授は、「(誹謗中傷を受けるなど)ネットで嫌な思いをした人ほど炎上に加担しているのが現実」と被害者にならないための予防が重要だと指摘する。自撮り画像や恋人との楽し気な様子の投稿、政治の話題が標的となりやすいと強調。SNS事業者への削除依頼や警察、自治体への相談窓口の活用が有効な対処法となるとした。 ■自分の「正義感」に敏感に
一方で、加害者にならないためには「情報の偏りを知る」「一呼吸置き、自分の『正義感』に敏感になる」「自分を客観的に見る」ことなどを挙げた。山口准教授は「誹謗中傷は民主主義に危機をもたらす。みんな自由に発信できるSNSで表現の委縮が起こっている」と警鐘を鳴らす。「誹謗中傷を正当な批判と感じる加害者や、逆に正当な批判を誹謗中傷と受け取る被害者もかなり多い」といい、批判と誹謗中傷を区別できるように、学校教育で討論形式の授業を充実させるよう訴えた。(高木克聡)