健康を左右する舌 全身に悪影響及ぶ「落ち舌」/医学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<19> 疲れやすい、寝ても寝ても眠気が取れない、アレルギー症状がある、姿勢が悪い、首や肩が凝る、口周りや首のしわが気になる、口臭がする…。誰もがこんな症状のどれかに当てはまるような気がします。ひとつでも心当たりがあるという方は「舌の力」が衰えていないかを調べてみると良いかもしれません。 何げなく過ごしている時、舌の位置がどこにあるかを常に意識することはとても大切です。理想的な舌の位置は、上顎に舌全体が吸い付くように付いている状態です。舌先が上の前歯の根元あたりにちょんと触れている程度だと無駄な力が入りすぎず、ちょうどよいポジションかと思います。もし舌先が下顎の前歯の裏についていたり、どこにも接しておらず、中ぶらりんの状態であれば舌の力が弱っている証拠。いわゆるこの「落ち舌」と呼ばれる状態が続くと、口の中だけでなく全身に悪影響が及びます。 舌の重みで口がぽかんと開くと口呼吸になります。鼻で大きく空気を吸う場合と異なり、呼吸が浅くなって体に必要な酸素がうまく取り込めないため自律神経が乱れます。このため集中力の低下や、やる気の消失を招き、仕事もはかどらない、疲れやすいといった負のループが始まります。口が開いていることで、埃やウイルス、細菌などが入り放題なのですが、口の中もカラカラに乾いているので、こうした有害物質が洗い流されず、とどまります。これがアレルギーや感染症にかかりやすくなる要因ともされています。 筋肉を包む薄い膜を指す「筋膜」は、ソーセージの皮をイメージするとわかりやすいかと思います。舌はそれ自体が筋肉の塊であり、筋膜を介して全身とつながっています。落ち舌によって姿勢にまで影響が及ぶ理由はこの仕組みがあるからです。疲労がたまる上に肩こりや頭痛、腰痛となれば、まさに踏んだり蹴ったりです。