ジャパニーズノワールの奇才・小路紘史監督、8年ぶりの新作映画『辰巳』
今回は、2024年4月20日公開の映画『辰巳』を取り上げる。
いやー熱いぜ! 裏稼業に手を染めた男が守りたいもの
滝藤が学生時代から、もっとも影響を受けた監督、トニー・スコット。彼の作品のなかでも、2004年公開の『マイ・ボディガード』は、何度観たかわからないぐらい大好きな映画です。 米軍での対テロ部隊で心身をすり減らし、アルコール依存症となったデンゼル・ワシントンが、メキシコ在住の9歳の少女のボディガードとして生きる糧を見いだす物語。 若い頃、特別部隊で無敵だった伝説の男が、ミドルエイジになり、酒に溺れ落ちぶれる。もう自分のためには頑張れないが、誰かを守るために、必死に戦い、葛藤しながら過去の自分を取り戻す。その漲(みなぎ)ってくる様は、観ていて爽快だし、奮い立たせてくれる。 いつか、俺もこんな役をやりたい! と何年も思い続けていたら、素晴らしい作品が日本でも公開されますよ! 小路紘史監督の映画『辰巳』です。ちなみに私は一瞬たりとも出演しておりません(涙)。 小路監督の処女作『ケンとカズ』(2016年公開)が映画界に旋風を巻き起こし、“ケンとカズがヤバい”“ケンとカズ観た?”といろんな所で話題にのぼったのは今でも覚えています。大河ドラマ『光る君へ』の盗賊・直秀役で視聴者の胸をキュンキュンさせた毎熊克哉君が世に出た作品。 あれから8年。え! 2作目! ウソだろ! 小路監督! 何があったんだ! 諸説ありますが、本当のことは知らないので触れません。ただ『辰巳』は8年の凄みを感じる作品です。 闇組織に姉を殺された葵。遠藤雄弥さん演じる辰巳は、葵の姉の元恋人というだけなのに、組織に立ち向かおうとする彼女の復讐に巻きこまれていく。 キャストの方々の目がギラギラしていて、終始、何かヤバいことが起きるんじゃないかと観ていて気が気じゃない。もちろん、言うまでもなく、100%血生臭い。強烈なにおいを放っています。だってあのポスタービジュアルですよ。でもいいんですよねえ。生きてる! って感じがして。 小路監督はじめ、『辰巳』に関わったスタッフ、キャストの執念に呑まれないよう要注意っす。 『辰巳』 小路監督が自主制作で放つ長編第2作。闇組織の一員として過去に弟を見捨てた辰巳。元恋人が殺害され、その妹を助けたことから組織に狙われる。バイオレンス、アクションシーンが冴えるアジアンノワール。2023年の第36回東京国際映画祭「アジアの未来」部門出品作。 2023/日本 監督:小路紘史 出演:遠藤雄弥、森田想ほか 配給:インターフィルム 2024年4月20日より渋谷ユーロスペースほか全国公開 滝藤賢一/Kenichi Takitoh 1976年愛知県生まれ。Netflixにてドラマ『幽☆遊☆白書』が世界配信中。2024年4月1日からスタートするNHKの連続テレビ小説『虎に翼』にも主人公の上司役で出演する。
COMPOSITION=金原由佳