道路が陥没して傾いた建物=2024年9月26日午後0時53分、広島市西区福島町２丁目、上田潤撮影

　広島市で起きた道路の陥没で、近隣住民が身を寄せた避難所にいち早く弁当を届けた社長がいる。現場近くで育ち、地元に本社を構えて半世紀以上。避難者が地域に戻ってきてくれるのか、社長は気をもんでいる。 【画像】「ピキピキ」家が…恐怖感じて避難　道路陥没、「いつ帰れるのか」 　「会社近くで道路陥没が起きている」 　9月26日午前、そんな一報が河井光誠（みつなり）さん（79）の耳に入った。河井さんは「河井建設工業」の社長。現場から約300メートル離れた所に本社を置く。 　道路陥没で、市営住宅を含む少なくとも11棟が傾いたりひび割れたりした。住民が近くの小学校の体育館に避難したと知ると、河井さんはすぐに食べ物を用意するよう社員に指示した。 　社員は、スーパーやコンビニエンスストアで弁当50食分と飲み物を昼食として届けた。夜は、広島名物のおむすび弁当100食分などを用意し、約50人が避難した体育館に運んだ。 　道路が陥没した同区福島町で育った河井さん。この地で53年前に創業し、公共工事などを請け負ってきた。 　道路陥没は、地下に雨水管を通す掘削工事が原因とみられている。河井さんは「ここら辺は大雨ですぐ道路に水があふれる。必要な工事なんよ」と言う。 　実は河井さんの会社、この工事を受注しようと、大手ゼネコン会社と組んで入札に参加したが、落札できなかった。避難所運営に携わった西区の担当者は「発生した当日すぐに食事を提供するのは難しく、大変ありがたかった」と感謝する。ただ、河井さんは特別なことをしたとは思っていない。 　「地元に困りごとがあったら助けなきゃいけん。それだけよ」 　長年の経験から、建物の点検や復旧には時間がかかるとみる。「避難した人が、また福島町に帰ってきてくれるかわからんねぇ」。そんな心配がよぎる。（根本快）