「お酒と煎餅で」銀座のサードプレイスを目指すバンドマン社長/創業220年の煎餅店、明治時代も「夜な夜な街の爺婆を集めて…」 ~松﨑商店後編
東京・銀座で創業220年を迎えた煎餅屋「松﨑商店」。8代目の松﨑宗平代表取締役社長は、就任直後に脳梗塞に倒れながらも、コロナ禍真っ最中に本店を移転したり、イートインスペースを設けたりするなど、大胆な仕掛けを続ける。松﨑社長が銀座で目指す将来像と、明治時代から続く「商いのDNA」に迫った。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか専門家に聞いた。
◆銀座の「サードプレイス」に
――本店は東銀座に移転後、客数も売上も回復したとのこと。コロナ前よりも業績を伸ばせた「成功のポイント」はどこにあるとお考えですか。 松﨑 コロナ禍になった時、銀座本店の売上はもうボロボロだったんですよ。 百貨店も同じで、売上を唯一キープできたのが“地域密着、原点回帰”を掲げた「松陰神社前店」。 私が副社長時代、2016年にオープンした店舗です。 縁もゆかりもない場所でしたから、街の人に気に入ってもらえなかったら終わり。 居心地がいいと感じてもらうために、玄関を1mセットバックしてママさんの自転車を停められるようにしたり、トイレを広くして赤ちゃん用のベッドを置いたり、段差があるところには急ながらスロープを併設したりと工夫をこらしました。 一方の銀座本店は狭く、地域の憩いの場として機能していなかったんです。 そこで移転時には「銀座のサードプレイスになる」というコンセプトを掲げました。 銀座で飲むと軽く5,000円は飛びますからね。 でもうちなら、お酒と煎餅だけでリーズナブルに遊べる。 ターンテーブルを置いて、街の人たちに「今夜、ちょっと面白いことをやるからおいでよ」といえる店にしました。 2023年10月6日には「酒と煎餅と#漬物と」というオープンなイベントを計画しました。 今後もどんどん交流の場として開いていきたいですね。
◆東銀座は、下北沢とかに近い面も
――東銀座という街そのものを盛り立てていくと。 松﨑 もともと銀座エリアは、商店の人らが手を取り合って、進むべき道を話し合いながら街を守り育ててきました。 巨大な資本が入っている日本橋や丸の内とはまた違う、どちらかと言えば下北沢とかに近い土壌なんだと思っています。 とくに東銀座は、非常に完成されていて隙がない銀座に比べて、ある意味伸びしろがある。 20代、30代の若者にも頑張ってお店を出してもらって、新たな文化を醸成していけたら嬉しいですね。 銀座とは異なるブランディングできる、エネルギーと可能性を秘めた街だと思います。