新型BMW 5シリーズは見事な“高級セダン”だった!!! 日本でもコレを選べば間違いナシ!?
フルモデルチェンジしたBMWの新型「523i」は、完成度の高いセダンだった。試乗した大谷達也がリポートする! 【写真を見る】新型523iの日本仕様を徹底チェック!!!(100枚)
馴染みやすいデザイン
最近のBMWは、どれに乗ってもボディがしっかりしているうえに足まわりがていねいに作り込まれていて、ハンドリングと乗り心地が高いレベルで両立されているように思う。インテリアのクオリティも高いし、装備も充実している。さらにいえば、ドイツ系プレミアムブランドのなかで比べると価格も比較的抑え気味で値ごろ感がある。 だから、試乗して「うわ、コレ欲しいなぁ」と、思うクルマも少なくないのだけれど、なかなかうまく呑み込めないのがそのエクステリアデザインで、一部モデルで採用されている巨大な縦型キドニーグリルに“アレルギー反応”を起こす人も少なくないのではないか、と、想像する。 そうしたなか、私たちの目に馴染みやすいデザインとして登場したのが、先ごろフルモデルチェンジを受けた5シリーズである。 新型5シリーズでも、キドニー(腎臓)を模した2分割のグリルは、フロントマスクのデザインにすっと溶け込んでいるというよりも強く存在感を主張していて特徴的だけれど、その形状が横長とされているのもあって違和感はあまり覚えない。このあたりは、5シリーズがヨーロッパではカンパニーカー(社用車)として使われる比率が高いため、奇抜なデザインは採用しにくかったという事情が関係しているのかもしれない。 8代目の5シリーズは、シリーズ初の電気自動車(EV)がラインナップされるいっぽうで、これまでとおなじようにガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載したモデルも用意されているのが特徴。BMWは、ひとつのモデルにさまざまなな種類の動力源を用意する“パワー・オブ・チョイス”という戦略に取り組んでいるが、おなじ考え方が新型5シリーズにも採り入れられたのだ。
“駆け抜ける喜び”を感じられる1台
今回試乗したのは、このうち直列4気筒の2.0リッター・ガソリンエンジンを搭載した532i。新型5シリーズのエンジン車は48Vマイルドハイブリッドというコンパクトなハイブリッドシステムを搭載してエンジンのレスポンスと燃費の改善に努めた点に大きな特徴がある。 効果は、乗るとすぐに実感できるはずだ。一般的にいって、ガソリンエンジンは回転数が低い領域では力強さを感じにくく、回転数が高まっていくにつれてパワーがあふれ出てくる傾向にあるのだけれど、523iは市街地を走行中でエンジン回転数が低い状態でも、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間に背中をぐっと押されるような加速感が伝わってくる。この辺は、低回転から強力なトルクを生み出すモーターがエンジンをサポートすることで実現されたものだろう。 乗り心地は、ほんのちょっと硬めでゴツゴツとした印象がないわけではないけれど、足まわりから伝わるイヤな振動を頑丈なボディがシャットアウトしてくれるので、不快には思えない。むしろ、少し硬めのサスペンションがボディをしっかりと水平な状態に支えてくれるおかげで、高速道路を走っていても身体が揺さぶられにくく、疲れにくい。おまけに、ハンドル操作に対しても正確に反応してくれるので、山道のコーナリングはなかなか楽しい。BMWのスローガンに“駆け抜ける喜び”というのがあるけれど、まさにそのとおりの走りだと思う。 燃費もいい。高速道路を走っていると、18km/Lを越えるのも難しくない。全長5.0mもあるセダンとしては立派な数字だ。しかも、燃料タンク容量は60リットルもあるので、満タンのとき、メーターパネル上に表示される“残り航続距離”が1000kmを越えていることも珍しくない。これもまた、ガソリンエンジン搭載モデルでは異例だ。 運転支援システムでは、ステアリングから手を離すことが一定条件下で認められるハンズオフ機能が搭載されているほか、ナビゲーションシステムを始めとするインフォテインメント系も音声認識システムがパワフルで使い勝手がいい。この分野で定評のあるメルセデス・ベンツと比べ、一部の先進機能ではメルセデスに分があるものの、実質的な部分に限っていえば遜色がないくらい5シリーズも充実している。 そのメルセデス・ベンツは、5シリーズの対抗馬となるEクラスを昨年フルモデルチェンジしたばかり。その目玉は運転支援システムやインフォテインメントのさらなる進化にあるけれど、なかには法規制の問題で日本には導入できない機能もある。いっぽう5シリーズは、前述のとおりメルセデス・ベンツほど先進技術の採用に熱心ではないものの、クルマの本質的な機能やクォリティを徹底的に磨き込んできた。昨今は、クルマの電動化やインテリジェント化がやたらと注目を集めるようになっているが、クルマの本質的な部分の改良に熱心に取り組むBMWの姿勢には強い共感を覚える。
文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)