「避妊法」の選択肢が狭すぎる日本、欧州と全く異なる「性への理解」について専門家が解説
欧米と日本、圧倒的に異なる避妊方法
国連発表の「Contraceptive Use by Method 2019」によると日本の低用量ピルの普及率が欧米に比べ、著しく低いことがわかる。 「昨年、欧州諸国のSRHRの現状を視察に行きました。そこで実感したのが、避妊法の豊富さだけでなく、入手のプロセスが圧倒的に簡単ということ。価格も無償な国が多い。日本は10代などの若年層が低用量ピルやアフターピルを入手するための、健康保険証提示や費用などがネックになることも。フランスでは昨年、年齢関係なく全女性、緊急避妊薬が無償化になりました。 一方、政府が少子化を問題視し『人口増強』を口にすると、女性たちが『私たちの体は武器ではない、私たちのもの』と声をあげました。やはり声を上げることは大切です」(福田さん)
「コンドームで避妊は完璧!」ではない
1枚目のグラフからも分かる通り、日本では圧倒的に避妊法としてコンドームを選択する人が多い。しかし、実際にコンドームの避妊率は高くない。 「低用量ピルの避妊率は91%。最近、話題になっているミレーナなどのIUDは99%の避妊率といわれています。それに比べるとコンドームは85%程度。しかも、これは最初からきちんとした状態で付けられた場合の話で、男性側に装着させるということから、タイミングが遅れたり、実際には装着してくれなかった、装着が適当で途中で外れてしまうことも。そういった意味からも安心・安全な避妊法とは言えず、性感染症予防にコンドーム、避妊はピルなどで行う“ダブル使用”の意識が欧米では広まっています」(福田さん) 欧州では低用量ピルが一番人気だが、出産希望が当面ない人には、"LARC法"も。LARC法は3~5年単位で使用可能で、子宮内避妊具のIUDやIUS、埋め込み式インプラントがある。 そのほか月単位の注射法、週単位のパッチ法・膣リングなどもあり、PMS改善の副効用等も合わせ自分らしく選択できる。
若者が無料で相談できる、“ユースクリニック”の存在
スウェーデン留学時代に、福田さんは“ユースクリニック”に感動したという。 「13~25歳の若者が無料で利用できる公的な医療機関です。スウェーデンの人口は東京23区よりもやや多いくらいですが、そこに約250カ所もユースクリニックが存在しています。 日本の産婦人科は入りづらいと感じる人もいるようですが、ユースクリニックは医師、助産師、カウンセラーや性の専門家であるセクソロジストが常駐していて、『よく来たね!』と出迎えてくれます。 性の悩みのほか、思春期の悩みも気軽に相談可能。18歳以下は避妊具も緊急避妊薬も無償です。地域によっては25歳以下なら自治体の補助があり、避妊の本人負担年間約1000円など支援が充実。日本でもこういった施設を作りたいと思っています」
From Harper's BAZAAR April 2024 Issue