国民的オフロード車【ヤマハ セロー225】が誕生するまで「1985年最初期モデル<1KH>詳細解説」
開発コンセプトに加えられた「転ぶ」というキーワード
また、壊れないこともセローでは重要視されていた。「壊れない」と言っても、単に故障しないということだけでなく、たとえば鳥も通わぬような山奥で転倒したときに、簡単に走行不能になるようではマウンテントレールとして不十分と考えられたのだ。 そのため、開発コンセプトに前代未聞の「転ぶ」というキーワードが加えられた。徹底した軽量化はその一環でもあったし、ほかにも接触後の変形まで考慮したアルミ製エンジンガードや、ブレーキ関係のロッドやリンケージをフレーム内側に追いやることなど……。すべては最小のリスクで最大限に遊べることを目指した機能だった。 この初代モデルの登場後、セロー225は時代ごとのニーズの変化に合わせた小変更を繰り返しつつ、20年にわたりユーザーに愛されていくことになる。またその土台は、初代モデルですでに確立されていたのである。
1985年発売、ヤマハ初代セロー225(1KH)の特徴を解説
■エンジン エンジンは1982年発売のXT200ベースにボアを拡大した223㏄。開発時には250㏄フルスケール仕様なども試作されたというが、出力および耐久性などのバランスを考慮し、最終的に223㏄に落ち着いた。 内部には振動低減のためのバランサーを装備しており、それは車体の補強を減らして軽量化することにも貢献している。さらに圧縮を抜くセミオートデコンプも装備し、始動性の向上も図っている。 ミッションのギヤ比は初期型のみは1速をスーパーローとしてトライアラー的な性能を高めていた。エンジンガードは大型のものとし、エンジン本体との間にゴムを挟むことで変形を防いでいる。 キャブレターはシンプルな構造の26mm径VMタイプ。後年の負圧キャブに比べると扱いに若干のコツを要したが、スロットルワークに対するメリハリのよさはこちらが上。 ■装備 ステアリングステム部にはスチール製の握り手(部品名:ハンドルスタンディング)を装備。山間部でのスタック時など、車両を安全な場所まで移動させる際に役立つ。またこの装備、「無理にスタックから抜け出そうとしてタイヤで地面を掘り、山を荒らすことを避ける」目的もあるという。 タンデムシート脇に装備されるグラブバーは、ステアリング部の「ハンドルスタンディング」と同様にスタック時などの握り手にもでき、かつ転倒時にウインカーボディを保護する役割も果たす。 必要最低限の装備しか持たないメーターまわり。装備をシンプルにし、かつ小型化することで車体の軽量化に寄与している。 ■足まわり フロントのディスクブレーキにはピンスライド式の1ポットキャリパーを装備。ブレーキローターには半周以上を覆うカバーが取り付けられ、ラフロードでの泥詰まりやそれに伴うパッド/ローターの摩耗を防ぐ。 レポート●神山雅道 写真●ヤマハ、別冊モーターサイクリスト編集部