【視点】「地方創生」危機感持ち取り組め
石破茂首相は三重県伊勢市での年頭記者会見で「『令和の日本列島改造』と位置づけ『地方創生2・0』を強力に推し進める」と述べた。 地方から都市部への人口流出は依然として続き、都市部の過密化に拍車が掛かる一方、地方は自治体の存続が危ぶまれるほど衰退した。 初期の「地方創生」で地方と都市部の格差を十分に是正できなかった反省を踏まえ、石破内閣の「地方創生2・0」が始動したわけである。 情報通信技術の発展と、それによる遠隔医療や遠隔教育の実現、リモートワークの普及などが「2・0」で新たな要素として加わった。 近年は「2地域居住」といった概念も注目されている。都市部と地方で2つの拠点を持ち、それぞれの良さを生かしながら仕事や生活を充実させるライフスタイルだ。 首相も会見で「まずは隗(かい)より始めよ」と述べ、国の若手職員による2拠点活動を支援する制度を新設すると表明した。 地方在住者が大都会に出ると林立する巨大ビル、生活の便利さ、モノの多さに圧倒される。だが同じ次元で「豊かさ」を論じる限り、地方はいつまで経っても都市部の劣化バージョンでしかない。 地方には美しい自然や独特の伝統文化など、都市部にはない良さがある。それは今さら繰り返すまでもないことだ。 リモートワークや2地域居住を活用し、都市部の利便性と地方の安らぎを両立した仕事、生活を可能にする。それを国や自治体も後押しする。 単に地方の「都市化」を進めるだけではない、新たな形の地方創生を実現してほしい。それが地方から都市部への人口流出に対する歯止めになる。 国が進める地方創生は、沖縄にもそっくり縮図として当てはまるかも知れない。本島対宮古、八重山という視点で見れば、本島への一極集中が「離島苦」と呼ばれる慢性的な格差を生んでいるからだ。 さらに本島だけに焦点を当てれば、開発が進む中南部と経済的に停滞する北部の格差が存在する。那覇への一極集中と呼ぶべき状況で、それが中南部の恒常的な交通渋滞の問題につながっている。 本島と離島との格差は、本島と陸続きではない離島の住民にとって、都市部の住民とは比較にならないほど高い交通コスト負担を生む。 児童生徒の派遣費負担が大きな課題になっているが、そもそも「大会は都市部で開くもの」という既成概念を覆し、大規模イベントを離島でも普通に開催できる環境づくりを進めるのが抜本的な対策ではないか。国と同様、県にも「離島創生」の意識が求められるだろう。 首相は会見で、日本が明治維新後に「強い日本」、敗戦後に「豊かな日本」を目指してきたとした上で、自らが掲げる将来像を「楽しい日本」と表現した。 「地方創生2・0」はその第一の柱だという。国民が豊かさを徐々に実感できなくなった現在の日本が「楽しい」とは言い難くなっている。まずはその現状認識に立ち、危機感を持って政策実現に取り組むべきだ。