ステージ4の直腸がんでフルマラソン! 「がん共存療法」で生き延びる患者の証言 「何かに集中すれば頭からがんの存在が消える」
ステージ4のがんと診断されながら、フルマラソンや100キロのウルトラマラソンを走破し続ける患者がいる。手術を経て抗がん剤治療を拒否し、選んだのは既存薬や糖質制限ケトン食、サプリを利用するがんとの共存療法。驚くべき、その取り組みとは――。【亀井洋志/フリージャーナリスト】 【写真を見る】ステージ4で100キロを完走! ウルトラマラソン出場時の勇姿 ***
この秋、季節外れの暑さが続いたが、北陸地方も例外ではなかった。10月13日、新潟県上越市で開催された「えちご・くびき野100Kmマラソン」には、約1800人(うち50キロの部は約500人)が参加した。この日の最高気温は24.7度とほぼ夏日。ランナーにとっては厳しい陽気となり、完走率は61%にとどまった。 東京都内在住の東島(ひがしじま)道夫さん(61)は100キロの部に出場し、制限時間(14時間)内の13時間36分36秒で堂々と走り切った。マラソンをライフワークとしている東島さんだが、100キロは3度目の挑戦で初めて完走を果たした。フルマラソンの42.195キロを超える距離を走る競技を「ウルトラマラソン」というが、中でも100キロは過酷なレースだ。フルマラソンとは走り方もトレーニング方法も異なるという。
60歳になってキャリアハイ
東島さんは今夏の酷暑のさなかもランニングを欠かさなかったが、筋力と心肺機能の強化のため特に取り組んだのが「峠走」だ。東島さんが説明する。 「フルマラソンは高低差が少ない平坦な道を走りますが、ウルトラマラソンは起伏が激しいコースが多いのも特徴です。『えちご・くびき野』も6カ所の大きな峠道がありました。私は月間300キロ走ることを目標にしていますが、時には丹沢のヤビツ峠などに行って、峠道を往復するトレーニングを取り入れました」 そのかいあって、ウルトラマラソンで完走を果たしたわけだ。5月に神奈川県横須賀市などで行われた大会では100キロを走破しながら制限時間オーバーで失格していただけに、リベンジに成功した形だ。 「私の場合、ウルトラマラソンはタイムが目標ではなく完走が目標ですから、休みながら比較的ゆっくりと走れます。けれども、フルマラソンのほうはスピード勝負になるからキツいですね。峠走は持久力アップにつながりますが、足は遅くなります。今度は河川敷などを全力で走るトレーニングが中心になります」 東島さんの体はすぐに順応した。12月1日にはおよそ1年ぶりのフルマラソンとなる「湘南国際マラソン」に出場し、3時間51分54秒の好タイムでゴール。昨年の同大会の記録から約3分間短縮した。 「このタイムを出せたことに満足しています。去年の今頃は、『来年はもう走れないかもしれないな』とも思いましたから……」 昨秋は東島さんの競技生活で大きな転機となった。40歳過ぎから始めたというマラソンだが、60歳になってキャリアハイを迎えたのである。