寝たきり社長の働き方改革(15)行き過ぎた情報収集は行動を起こさなくなる
社長の仕事は意思決定をすることだ。したがって、経営のための情報収集は非常に優先度が高い。その意思決定は、すべて集めた情報をもとになされるからである。
筆者も、情報収集をとても大切にしていた人間だった。情報収集をたくさんすれば、自ずとビジネスが上手く回る。ひいては、ビジネスを成功に導くための大きなポイントになるのだ……。そう考えていた。しかし最近、筆者は過度な情報収集を行うことをやめた。そして、その選択は間違っていなかったと日々実感している。 以前は、流行りのキュレーションサイトを読み込んだり、Amazonで人気の経済関連の書籍を常にチェックしたりした。時間を見つけてはネットニュースの時事ネタに目を通し、そのニュースに対する著名人や評論家のコメントを読み込む。「ふむふむ。なるほど、そういう解釈をしたのかぁ」と一人うなずいていた。 有益な情報を知っているか否かが、仕事の成果に直接的に紐づくことは珍しくない。ある程度の情報収集は社会人のマナーだと思うし、常日頃から情報収集を意識して行うことは大切だ。 「もっと多くの情報を! もっと最新の情報を!」 止め処なく情報収集の媒体を増やしていった。時間がない日は「後で読もう」と言ってニュースをストックさせる。そして、スキマ時間ができたとき、そのニュースの内容を読み込むのではなく、一気にさばいていくことが目的となった。気付けば情報収集という手段ばかりに気を取られ、「その情報をもとに、行動を起こす」という、本来あるべき時間が消えていた。 筆者はいつしか情報収集を行うことに不安を感じるようになってきた。 情報収集に何時間もかけてしまうと、「あの問題を解決するために早く○○をしないと」という緊迫感や、「これは面白そう! もっと深いところまで掘り下げたい!」とせっかくアンテナが反応して芽生えた探究心も、徐々に薄れてしまう。 情報収集を行いすぎると、多くの人は「自分で考えることをやめ、行動を起こさなくなる」のである。自分自身の思考に頼るのではなく、ひたすら誰かの意見を待ってしまう。もちろん、これは人によるのかもしれないが。 たまたま筆者は、他の人の意見を聞かない方が、思考を深めたり斬新な発想が出てきたりするタイプなだけで、逆に情報やコメントをどんどん浴びることで、さらに面白いアイディアが生まれるタイプの人間もいるだろう。 だが、一つだけ言えることがある。それは今の時代は昔とは違うので、執拗に情報を収集しなくて良い、ということだ。正直、最低限の情報は向こうから入ってくる。それよりも、日常の学校生活や職場といった、普段から目にし、耳にする情報をまずはインプットすることが肝要なのだ。 すると、「この人の情報に触れていると、すごくモチベーションが上がる」という人が見つかってくるはずなので、そのような情報を持っている人と積極的に関わるべきなのである。 情報量を客観的に見直していったときに、自分にとってプラスの影響を及ぼしていない人、あるいは、価値のない情報源はカットしていこう。大切なことは、自分に合った情報源を主体的に最適化していくことなのだ。