劇場版『ガンダム00』観客ア然シリーズ初の超展開 けどやっぱ笑わせに来てるっしょ?
「ガンダムVS宇宙怪獣」は水島監督が本来やりたかったこと
『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』は、TVシリーズ『機動戦士ガンダム00』のその後を描いた作品です。TV版のファンは、「刹那・F・セイエイ」をはじめなじみあるキャラクターが帰ってきたうれしさ……を通り越し、誰もがあ然としたのではないでしょうか。ひとことで言えば、「ガンダムVS宇宙怪獣」だったからです。 【画像】「もうなんでもいいや」こちらが性別という概念を破壊したガンダムマイスターです(8枚) 西暦2314年、私設武装組織「ソレスタルビーイング」(以下、CB)と「ガンダム」の奮闘により、人類が武力に頼らない社会を築きつつあるなか、130年前に廃船となった木星探査船「エウロパ」が地球圏に漂着します。連邦軍が地球への突入こそ阻止したものの、その後、無人の乗り物が暴走したり、「脳量子波(テレパシーのようなもの)」に目覚めた人々が苦しんだりといった現象が発生、やがて人体に寄生する金属生命体が現れ……。 もろに地球侵略SFのつかみであり、エイリアンが闇に潜む前ぶれそのものです。実際、CBのガンダムマイスター(パイロット)らが調査のため宇宙に上がると、破壊したはずのエウロパが無数の金属生命体とともに襲いかかってきます。 エイリアンもとい宇宙怪獣という展開であり、「ガンダムVS地球外生命体」は長きにわたる「ガンダム」シリーズの、少なくともアニメ作品では史上初のことです。 とはいえ、別に唐突なことではありません。まず水島精二監督が、TVシリーズの企画当初は「外宇宙生物と戦うガンダム」を提案していたものの、やがて「戦争根絶のために戦うガンダム」にシフトしたのは何度か語られています。 そしてTVシリーズのテーマは「人と人との対話」であり、見事に成し遂げられました。が、それも「来るべき対話」の布石に過ぎないと繰り返しつつ、伏線を回収しないまま終了しています。その次なる「対話」の相手が地球外生命体こと「ELS」ということで、ごく自然な流れだったのです。 なぜELSを金属生命体にしたのかといえば、水島監督は「どう見ても生物に見えない、どんな意志を持っているか分からない」ゆえに対話が成立しにくいものにするため、と、メディアに対し語っています(「ASCII.jp」2010年12月4日)。恐怖を乗り越えて、いかにコミュニケーションを取るかというわけです。