サッカー日本代表3バックシステムを福田正博が考察「ポイントはウイングバックの縦への意識」
【選手層が厚い、センターバックと2列目】 9月シリーズでは3バックの中央に谷口彰悟(185cm)が入り、右CBを板倉滉(188cm)、左CBを町田浩樹(190cm)がつとめた。ただ、CBには故障のため招集外だった冨安健洋(187cm)と伊藤洋輝(188cm)がいる。9月シリーズで日本代表デビューを飾った高井幸大(192cm)という次代を担う逸材も控えている。 冨安、伊藤が日本代表に復帰したら、レベルが高く、選手層の厚いCB陣になるのは間違いない。左CBには左利きの伊藤、右CBには冨安を入れ、クラブでは3バックの中央もつとめる板倉を据え、経験豊富な谷口をベンチに置いて有事に備えることもできる。 また、伊藤は4バックの左SBでもプレーでき、冨安にいたってはアーセナルで左右のSBとしての経験が豊富にある。相手の力量、戦い方に合わせて、選手を入れ替えることなく3バックから4バックへと変化できるのも魅力だ。 このCB陣に加え、日本代表は2列目の人材が豊富にいる点も、森保監督が3バックへ変更する後押しになったはずだ。シャドーのポジションには久保建英、南野拓実、鎌田大地、旗手怜央がいて、アウトサイドには右に伊東純也、堂安律、左には三笘薫、中村敬斗がいる。さらに、前線ならどこでも使える前田大然と浅野拓磨もいて、ほかにも日本代表にいつ呼ばれても不思議はない選手たちが控えている。 そのなかで3バックシステムのポイントになるのが、左右のウイングバックだ。9月シリーズでは左に三笘、右に堂安がスタメンで起用されたが、このポジションの選手が相手陣のサイドを縦に崩せるかが攻撃の生命線になる。なぜならウイングバックの選手がボールを持って縦を突くことで、相手DFラインを押し下げることができるからだ。
【ウイングバックで重要なのは縦突破】 この点で言えば、左サイドは何の心配もない。三笘は縦を突いたり、中央に切れ込んだりのバランスが実にいい。また、ボールを受けてもそのすべてで勝負に行くわけではなく、すぐに後ろの味方に戻したりもする。対峙するDFにとっては狙いが絞れずに、つねに後手を踏まされている感じを覚えるはずだ。 これまでなら三笘薫が不在の時に、独力でサイドを突破できる代役がいない点に不安があった。前田大然はスピードがあって守備への貢献度も高いが、独力でサイドを崩すタイプではないからだ。それが9月シリーズの中村敬斗のプレーを見て、不安は払拭された。以前までの中村敬斗は中央に切れ込んでシュートに持ち込むプレーがほとんどだったが、バーレーン戦では見違えるように何度も縦を突いたからだ。 サイドの選手にとって重要なのは、プレーのファーストチョイスで縦への突破を意識することにある。縦方向への突破で相手DFラインが下がり、ゴール前にいる味方が使えるスペースが生まれるからだ。そうして相手に縦をケアする意識を植えつけたところで、中央にも切れ込む。すると、相手の対応が後手を踏み、結果的に中村敬斗のようなカットインからのシュート力が生きるのだ。 もう一方の右サイドは、縦への突破力が抜群の伊東純也の日本代表復帰は大きい反面、堂安のプレーには不安が残った。 堂安は9月シリーズで2試合ともスタメン出場し、中国戦では2シャドーの一角の久保とポジションチェンジすることで存在感を発揮した。久保が右サイドに流れて縦突破を仕掛けたことで、堂安は得意なゴール前でのプレーができた。 だが、2シャドーが南野と鎌田だったバーレーン戦では、ゲームから消えてしまっていた。縦突破を相手DFに意識づけできず、中央に切り込んでばかりだったため、相手DFは対応しやすくなり、結果的に右サイドからの攻撃は機能しなかった。 中央に切れ込むプレーをファーストチョイスにしても、4バックなら右SBがオーバーラップを仕掛けられれば相手のDFラインを押し下げることができる。しかし、3バックではオーバーラップする右SBはいない。そのためウイングバックには縦への意識が強く求められるのだ。それだけに今後堂安が右のウイングバックで、その役割をしっかり発揮してくれることを期待している。