「肉体関係なし」という契約をして結婚したい

発言小町のトピを読みながら婚活について語る（右から）藤本美貴さん、山口真由さん、山田昌弘さん（読売新聞東京本社で）

読売新聞の掲示板サイト「発言小町」が2024年10月、開設25周年を迎えました。家族やパートナーには明かせない秘密、職場では口にできない不平、日々の何げない疑問など、寄せられたトピックに対して活発な意見交換が行われています。四半世紀の間に積もりつもった女性の不満や悩みについて、タレントの藤本美貴さん、家族法学者の山口真由さん、社会学者の山田昌弘さんの3人が語り合いました。 【写真】発言小町のマスコット「くらげっと」を手に記念撮影する藤本美貴さん、山口真由さん、山田昌弘さん 　　　　　　◇　　◆　　◇ ――最近は、マッチングアプリで出会って付き合うケースが増えているようです。マッチングアプリで結婚したという話を身近で聞いたことはありますか。 藤本　独身だったら使ってみたい。周囲で使っている人は多いですし、いまどきの人はマッチングアプリで出会っている。相手がいない人には、「とりあえず登録してみたら？」って勧めていますね。恋愛や結婚って、出会わないことにはどうにもならないですから。 ――結婚を目標に意識的に活動する「婚活」は、16年前に山田先生が作った言葉です。婚活のありかたに変化は見られますか。 山田　「婚活」は、これまで自然とできていた結婚が、意図して「活動」しなければ難しくなったという意味で、「就活」になぞらえて作ったんですよね。うーん、実際に婚活の方法が変わったかというと、マッチングアプリで出会ったというケースは、結婚した人の1割程度しかいません。 山口　そうなんですか？　そんなに少ないんですね。 藤本　え～、意外です。 山田　若い世代で、恋愛に対する関心が薄れていますよね。この前も、「推し活にお金と時間を使いたいので、今つきあっている彼女と別れたい」という相談を学生から受けました。 山口　山田先生、読売新聞の「人生案内」だけじゃなくて、学生からも相談を受けているんですね？ 山田　そうですね、いろんな相談を受けていますよ。そこからも感じることですが、恋愛自体に興味がなくなっていて、恋愛を飛ばして結婚したいという人が増えているんです。 山口　増えていますよね。発言小町のトピでも見ます。 山田　日本人は保守的でリスクを嫌うので、マッチングアプリで知らない人と出会うのに抵抗を感じる人もいれば、最初からプロフィールやスペックなどの条件が分かっていたほうがいいと好んで使う人もいます。いずれにしても、出会った後に恋愛感情が湧くかどうか、ということなんですよね。最近では、恋愛感情なしで、契約を交わした上で「友情結婚」するケースもあるようです。 ――といいますと、いわゆる肉体関係はなしで？ 山田　「肉体関係なし」という契約をして結婚したい、という人も出てきています。実際、日本の夫婦は5割以上がセックスレスと言われていますから。友情結婚は、そういう時代背景もあって、出てきたものかもしれません。 ――条件を提示し合った上での恋愛について、どう思いますか。 山口　出会いの母数は広がったように見えるけれど、選ばれる人と選ばれない人の差が、残酷な形で現われている気がします。例えば、私もそうですが、博士号を持っている女性は、完全に「もてないプール」に入れられます。「もてない」という現実を突きつけられるので、結構きつい。実際に会って話をしてみたら、もしかして意気投合して、うまくいったかもしれないのに。「条件」という書類審査だけで落とされて二次面接へ進めないのって、偶発的な出会いを狭めているようにも感じるんです。 山田　ただ、偶発的な出会いで結婚した人は、そもそも5％ほど。これは、昔も今も同じなんです。「偶発的な出会い」というのは、旅行先などで偶然出会ったことが結婚につながった、というパターン。日本人の大半は、学校や職場が同じ人と結婚しています。職場結婚が多いのは、相手の性格や経済力が分かっているから。幼なじみや大学の同級生もそうでしょう。「偶発的な出会い」だと、相手のことが分からないじゃないですか。 山口　じゃあ、「運命の出会い」から大恋愛を経て結婚！なんて、なかったってことですか？ 藤本　それは悲しい……。 山田　いえ、そんなことはありません。職場や学校といった、狭い範囲の中で「好きな人」と出会っていたんです。つまり、出会いが少なければ、出会った人が素敵に見えるということです。けれど、選択肢が多くなると、「モテる人」と「モテない人」の格差が大きく広がってしまうんです。