大河ドラマ『光る君へ』で“主役を食う”活躍をみせた女優は?(5)賢さと強さが光る…心の変化を細やかに表現
吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)がいよいよ最終回を迎える。平安時代の身分を超えた恋愛を描き、これまでの大河ドラマとは一線を画した内容で支持を集めた。今回は、主演の吉高由里子に負けじとも劣らない芝居を見せた女優を5人セレクトしてご紹介する。第5回。(文・西田梨紗)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
吉田羊(詮子)
吉田羊は道長の姉であり、円融天皇(坂東巳之助)に入内した詮子を演じた。詮子は円融天皇から寵愛を受けられず孤独を抱えているものの、宮中で政力を増していく。道長や一条天皇を陰で動かす賢さと強さを兼ね備えた女性だ。 詮子の数ある台詞の中でも「この世の中に心から幸せな女なんかいるのかしら。みんな男の心に翻弄されて泣いている。でも私は諦めたくないの」という言葉が心に残っている。当時、上流貴族の女性の多くが本人の意思に関係なく、結婚し、家の繁栄に貢献していたが、詮子も例外ではない。 この言葉を述べたときの詮子は道長くらいしか心を開ける人はおらず、手を触れると壊れてしまいそうな弱々しさが感じられた。入内前、自身の夫となる円融天皇がどのような人物なのかという不安も道長にもらしていた。 吉田は詮子の不安やさみしさを見事に表し、当時の女性貴族がいかに不遇であったのかを、現代を生きる視聴者に説得力豊かに伝えてみせた。 詮子の最大の見せ場として、第4回「五節の舞姫」における詮子と円融天皇のシーンを挙げたい。円融天皇は詮子に毒を盛ったと疑惑をかけ、彼女に扇を投げつけた。吉田は悲しみと絶望に打ちひしがれ、混乱状態にある詮子を感情あらわに迫力満点の演技をしていた。 詮子は円融天皇によって絶望の淵に追い込まれるが、道長とともに内裏で勢力をしだいに増していく。物語が進むごとに詮子の佇まいや表情は変化し、たくましくなっていく。一条天皇の母となり、女院の称号を得る頃には堂々とした姿を見せていた。吉田は詮子の孤独を醸出させつつ、心の変化や立場の変化を細やかに表現していた。 (文・西田梨紗)
西田梨紗