【視点】立憲新代表 現実主義への転換を
政権交代を目指すなら、現実主義への転換は不可欠だ。自民党への批判や耳当たりのいいフレーズばかりが目立った立憲民主党の代表選だが、11月にも予想される衆院選に向け、政策立案能力がシビアに問われてくる。 立憲民主党の新代表に野田佳彦元首相が当選した。自らが首相として衆院選に臨んだ2012年以来、12年ぶりの政党党首返り咲きとなる。 「右」の自民党に対し「左」の立憲という立ち位置の中で、リベラルに偏らない保守中道的なイメージが、次期衆院選の「顔」として好感を持たれたようだ。 首相を退任した野田氏が久々に脚光を浴びたのは、2022年、国会で行った安倍晋三元首相の追悼演説だった。安倍氏から「自分は5年で(首相に)返り咲いた。あなたにも、いずれそういう日がやって来る」と励まされた、と述懐した。その演説内容が、期せずして今回の復活劇の布石になった。 代表選は野田氏のほか3人が立候補した。だが枝野幸男前代表は、3年前の衆院選で党が敗北した責任を取り辞任した印象がまだ強い。現職の泉健太代表は任期中、期待されたほどの党勢拡大を果たせなかった。吉田晴美衆院議員は知名度と経験の不足が響いた。 当選を決めた野田氏は「私は本気で政権を取りに行く覚悟だ」と衆院選への準備を早急に進める考えを表明した。 最近の主要選挙で、立憲民主党のアキレス腱となってきたのは共産党との関係だ。自民党に対抗するため野党共闘を進めたものの、共産党との連携が「立憲共産党」と揶揄され、穏健な中間層の離反を招く結果となった。 政権交代した場合、直面する最重要課題の一つが経済再生になる。ところが共産党との関係を深めると、そもそも自由主義経済を堅持する意思があるのかも疑われかねないことになる。共産党とどのような距離感を保つのか、党として立場を明確化しなくてはならない。 日本はGDP(国内総生産)の世界ランクが下がり、少子化もあいまって、近い将来「経済大国」の地位を失う方向へ進んでいる。 逆境に耐えられる現実的な経済成長の道筋をどう立てていくのか。同時並行の自民党総裁選に比べても、立憲代表選の候補者たちの論戦に華があったとは言い難い。 立憲は集団的自衛権の行使を容認した安全保障関連法を憲法違反とする。野田氏は日米同盟を基軸とした外交・安全保障を強調するが、同法の廃止は日米に深刻な亀裂をもたらしかねず、党の政策と矛盾しないか。 沖縄に関しては、立憲は米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する立場だが、これも同じ理由から疑問が大きい。辺野古移設問題で迷走した鳩山由紀夫政権の二の舞になる恐れはないのか。 自民党とは異なる国家観を提示しながら、それを単なる理想論に終わらせないのが、あるべき現実主義の姿だ。せっかく百戦錬磨の元首相が再登場するのだから、一皮むけた「野党第一党」の実力を示してもらいたい。