リニア調査ボーリングがたった10メートルで終了…「反リニア」川勝前知事の「呪い」との噂も
川勝知事の呪い
このため、静岡県内の調査ボーリングに着手したが、たった10メートル地点で終了したのは、川勝氏の「呪い」ではないかという声さえ上がっている。 川勝氏は「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」を主張し続けたが、鈴木康友知事によって終止符が打たれた。 鈴木知事は6月19日、「山梨県内の調査ボーリング」だけでなく、もともとの議論の始まりとなった先進坑、本坑掘削工事でも、「『静岡県の水』という所有権を主張せず、『静岡県の水』の返還を求めないこと」を長崎幸太郎・山梨県知事、JR東海と合意した。 さらに、鈴木知事は9月17日、JR東海が山梨県境を越えて、静岡県内での調査ボーリングを行うことを認めた。 これで、山梨工区の調査ボーリングは何の障害もなく、進められることになった。 この流れを受けて、長崎知事の提案に応じて、鈴木知事は10月5日、地表からトンネル天井まで約900メートルという地下深くで行われている山梨工区のリニアトンネル工事現場を視察した。 両知事が視察した10月5日時点で、先進坑は静岡県境まで約460メートルの地点まで掘り進められていた。 先進坑坑口に設置された調査ボーリングマシンの先端は、県境手前の257メートルまで進んでいた。湧水量は管理値の0・08%という極わずかであり、今後も順調に調査を進めるとしていた。 それからちょうど2カ月間で、先進坑坑口から約470メートル(静岡県内の10メートル)地点で調査ボーリングが終了したことになる。 17日に開かれた専門部会で、JR東海の説明によると、調査ボーリングをスタートして約100メートルを越えたところで、最初の断層(地質のもろい部分)でボーリングマシンを泥などから守るカバーとなるケーシングが詰まったという。ケーシングを交換した上で、さらに進んだ2カ所でも断層帯とぶつかり、大量の水分を含んだ泥などでケーシングが使い物にならなくなり、結局、ボーリングマシン自体が機能しなくなったと説明した。 「高速長尺先進ボーリング」の名称通りに、坑口から1キロを越えた調査も可能だが、南アルプスの脆弱な地層とぶつかり、静岡県内の未調査区間すべてを明らかにしたいというJR東海の思惑通りにはいかなかった。 JR東海は来年早々から先進坑を掘り進めた上で、あらためて静岡県内の調査ボーリングに着手したい意向だ。 しかし、今回の専門部会で、静岡県は、先進坑が県境まで300メートル以内に達する前に、リスク管理などで県の合意を得ることをJR東海に求めた。 それはなぜか。後編記事『リニア調査ボーリングがすぐ終了する違和感…川勝前知事が実は「正しかった」かもしれない』で解説する。
小林 一哉