訪問介護サービス基本報酬引き下げに疑問続出 ヘルパー来なくなり福祉崩壊か
厚生労働省は今年の4月以降に施行する介護保険制度の改定で、事業者が利用者(要介護者または要支援者)に対し介護サービスを提供した際に対価として得られる費用(介護報酬)を引き上げる。総改定率では1・59%の引き上げだが、訪問介護サービスは基本報酬が逆に引き下げになるとの同省の説明に、介護の現場からは強い反発の声が沸き起こっている。 引き下げ理由について厚労省は昨年11月公表の「令和5年度介護事業経営実態調査」の結果を挙げる。2022年度の各事業者決算で各介護サービス(22種類)における税引前収支差率の平均がプラス2・4%に対し、訪問介護が同プラス7・8%と高いというのがそれだ。また、基本報酬を引き下げた分は介護職員に充てる処遇改善加算の取得により、全体の収益はプラスになる、とも説明している。 しかしこれについて、さっそく試算を行なったのが、東京都三鷹市で訪問介護事業「NPOグレースケア」を運営する柳本文貴氏だ。柳本氏は実態は「プラスどころかマイナスになる」と反論する。 というのは、訪問介護では身体介護(排泄など)と生活支援(掃除など)のケアを時間単位で提供するが、中でも多いサービスは1時間程度のケア。そこで柳本氏が「身体介護2(30分以上1時間未満)」に絞って計算したところ、今回の改定により単位数は2・9のマイナスに。これでは基本報酬が下がった分を加算で補うことはできないことになる。しかも改定前も後も、最も高い加算を取った場合ですらマイナスになるのだ。 柳本氏は、自身の事業所の収益に与える影響も試算した。それによると年額では基本報酬分は222万円の減収。処遇改善加算分は144万円の増収になるが、事業所としては約78万円の減収になるという。厚労省は現行の処遇改善加算の水準で新加算に移行すれば2・1%増だとするが、基本単価の減少幅がおおむね2・4%以上なので大半の事業所はマイナスになる、と柳本氏は試算した。