将棋「電王戦」また勝利 コンピューターはトップ棋士に並んだ?
プロ棋士が相次いで「力負け」
今回の結果について元「週刊将棋」編集長の古作登氏(大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員)は「過去二回の電王戦の結果がソフトから見て7勝2敗1持将棋ですから、客観的に見てもすでにトップクラスの棋士(平均的なプロ棋士に対し7割以上の勝率)に並んだと言ってもいいのではないか」と指摘。奨励会在籍経験もある強豪の古作氏は「中堅クラスの棋士とトップ棋士の対戦棋譜を並べても、終盤までギリギリの競り合いになるけれども最後はトップ棋士が抜け出すことが多いように感じています」といい、ソフトの実力はトップ棋士に限りなく近づいたとみています。 長年コンピューターを用いた将棋の研究に携わってきた工学博士の伊藤毅志氏 (電気通信大学情報工学科助教)は「昨年の結果を鑑みれば、コンピューターとまともに戦っては、勝ちにくいということはわかっていたはずです。そういう意味で、厳しい言い方になりますが、本当に危機感を持って対局に臨んだプロ棋士は豊島七段だけではなかったのかという気がします。他の4名は、正々堂々と戦って、力負けしたという印象です。他の棋士も豊島七段と同様の準備をしていれば、逆の結果になっていてもおかしくなかったと思っています」との見方を示しました。
次回はあるのか? タイトルホルダー出場は?
第四回の電王戦開催について、将棋連盟とドワンゴともに明言はしていません。次回行うとすれば団体戦で連敗したプロ棋士側は、現役タイトル保持者の出場を望む声が出そうです。しかし将棋連盟の谷川会長は「タイトルは将棋連盟のものではないと思っておりますので、これはまったく別だと考えております」と述べるにとどまりました。タイトル戦は新聞社など大手マスコミが主催しており、仮に現役タイトルホルダーが出場して敗れた場合、タイトルの価値に傷がつくのではないかという危惧があるようです。 しかし、古作氏は「ファンの目線から見ればタイトルホルダーが最低1人は出ないと納得しないでしょう」と指摘。また伊藤氏は「本当は数年前のまだタイトルホルダーなら楽に勝てた頃に対戦しておくべきでした。 ただ、当時は環境が整わなかった。もし来年対戦するとすれば、ルールにもよりますが、私の印象では7:3ぐらいでコンピューター側が有利ではないかと思います。負ける可能性が高いと わかっている対戦にタイトルホルダーを出すのはリスキーな選択ですし、将棋連盟はもちろん世間も望んでいないかも知れません」と話しています。 その一方で、「何らかの形でタイトルホルダーとコンピューターの対戦は決着をつけた方が良いと思っています。後の世に”タイトルホルダー(トッププロ棋士)は対戦を避けて逃げた”という誹りが無いとは言えません。これは”対戦して負けた”という事実より味が悪いかも知れません」。
オセロやチェスではソフトが優位に
すでにオセロやチェスの世界では世界チャンピオンでもコンピューターに勝てなくなっています。将棋ソフトも今後さらに進化する可能性は高く、いずれ人間を上回るという見方もあります。反面、電王戦最終戦は累計70万人以上の人がニコニコ生放送の中継を見たとされ、ほかのタイトル戦に匹敵する人気になっていることも無視できません。棋士とコンピューターはどう共存し、将棋界に生かせるのか。今後プロ棋士を擁する将棋連盟が電王戦にどのように取り組んでいくのか注目されます。