「“あなた”には“パートナー”がいます…」思い込みや偏見に気付く“視点の入れ替え”の重要性 ゲーム型社員研修を取り入れた日立グループの狙い
「“女性に優しい”の女性って誰のこと?」
このDEIゲームを開発したのは日立コンサルティングの山本美海さんだ。 山本さんは2022年、新規事業を検討するワーキンググループにいた際、上司から「女性ならではの視点で女性に優しいサービスのアイデアを出してほしい」と言われたときに、「“女性に優しい”の女性って誰のこと?」と思いその上司に言ったという。 そして「ジェンダーなど属性に対する固定観念があることが問題で、それを解決できるものを作りたい」と思ったのがDEIゲームを開発するきっかけになった。 DEIゲームを使った研修会は、2022年から始まって取材当日を含めて30回行われており、のべで557人が参加した。 参加者の中には最初は恐る恐る参加する人もいたという。山本さんは言う。 「そういう方からも『様々な考え方があることを自分も意識しないといけないと思いました』といった前向きな反応を頂いています。また若手の方から『上司役をやってみて、部下に配慮することの難しさがわかった』といった感想もあります。視点の入れ替えができたのは、まさにこのゲームの狙いです」
「無意識にやらないように気を付けないと」
取材当日、参加者に研修会の気付きや感想を聞いてみると、ある参加者は「自分の中で勝手に抱いていたバイアスみたいなものが見つかってきたかなと思いました。たぶん一昔前だったらこうした研修はなかったので、最近様々なことを配慮しなければいけないし、配慮してもらえるという安心感を職場に広げる雰囲気づくりとして重要なことだったと思います」と語った。 また他の参加者からは「一見普通のご夫婦でも性的自認が違ったり、様々なことを言いづらくて隠している人もいるかもしれない。日常の雑談の中で『お付き合いしている人がいるらしいよ』という一言も、アウティングの最初の一歩になってしまっているかもしれない。自分でも無意識にやらないように気を付けないといけないなと思いました」との意見があった。
体験者は「最近言動が変わった」と言われる
これを受けて山本さんに「若い世代は感性が違いますね」と筆者が伝えると、「管理職以上と比べて、特にプロフィールカードを見た時の理解がとても早いんですね」と笑った。 「若手が対象の回では『知り合いにこういう人がいる』と自然と語りますが、管理職以上の回では『出会ったことがないです。私の身の回りにはいません』と言う方もいます。研修会ではアンコンシャス・バイアスの存在を理解するところで止まるのではなく、日常の場面でも活かしていきたいです。実際DEIゲームを経験した人は『最近言動が変わった』と言われるという話も聞きます」 DEIゲームは今後どのような展開を考えているのか?山本さんはこう語る。 「アンコンシャス・バイアスはジェンダーやセクシュアリティに限ったことではありません。属性によって選択肢が狭まる問題は、障がいや国籍でもあります。今後はほかのテーマを取り上げる方向でのコンテンツ拡張や、より気軽に参加頂けるようにするためのサービス展開、学校などさらに若い世代のおかれている環境を想定したパターンの検討など、どんな人も自分が望む選択肢を取れる社会づくりに貢献する活動を続けていきたいです」 (執筆:フジテレビ報道局解説委員 鈴木款) (写真提供:株式会社日立コンサルティング)
鈴木款