「本当に情けない」高校生にも負けた名門・東レアローズ…屈辱の中で〝陽キャ〟リベロが見つけた「明日」への種【黒鷲旗バレー】
バレーボールのVリーグ女子1部(V1)の東レアローズが、6日に閉幕した黒鷲旗全日本男女選抜大会(Asueアリーナ大阪)で屈辱を味わった。2大会前の覇者ながら、主力が立て続けに抜けた影響は否めず、1勝もできないまま1次リーグ敗退。Vリーグのレギュラーラウンドでも今季8位に終わるなど低迷する中、異彩を放っているのが九州共立大から新加入したリベロの松岡芽生(22)だ。「陽キャ」と呼ばれるエネルギッシュな言動とリーダーシップを発揮。敗戦から「明日」への可能性を見いだそうとしていた。 ■【写真】これぞ〝陽キャ〟リベロ! 元気なポーズでチームを鼓舞する松岡芽生 大会3日目の3日、東レは久光スプリングスにセットカウント2―3(21―25、15―25、25―20、26―24、7―15)で競り負けた。筑波大には1―3、下北沢成徳高(東京)にも2―3でそれぞれ敗れた。「これが今の私たちの力です」。3戦全敗で2023~24年シーズンを終えた松岡はVリーガーとして高校生に勝てなかった現実を受け入れた上で、こう言い切った。「本当に情けないです」 今夏のパリ五輪出場を目指す女子日本代表のアタッカー石川真佑(フィレンツェ)やセッターの関菜々巳(日本協会)らが去るなどメンバーが一新。「もう、東レは厳しいのでは」との評価も選手の耳に入ってきた。そんな声を払拭しようとしても、結果が伴わないだけに、松岡は歯がゆくて仕方がない。東レへの入団が内定したのは昨年12月の全日本大学選手権(インカレ)後。持ち前の明るさとガッツあふれるディフェンスで、すぐに溶け込んだ。司令塔で大黒柱だった関からも信頼を寄せられ、退団時には「これからは、メイ(松岡の愛称)が東レアローズに『新しい風』を吹かせてほしい」と、転換期を迎えたチームの起爆剤になることを期待された。その言葉を受け止め、4カ月あまりの短い期間でも、自身の立ち位置を理解し、真のプロフェッショナルになろうと努めている。
「勝ちたい」思いを練習でどれだけ表現できるか
久光戦後、松岡が下を向くことはなかった。「言い方はあれですが、久光さんとの試合では得たものも大きくて…。今までだったら、ストレートで簡単に負けていたところで、先に2セットを連取されても取り返せた。あれだけ気迫と気持ちを出して、2セットを取り返したことは一つの強みになります」。今季限りで退団するミドルブロッカー、大﨑琴未(23)の渾身(こんしん)のブロックポイントが呼び水となり、第3セットから反撃を開始。深澤つぐみ(21)や谷島里咲(19)らスパイカー陣も奮起した。「若い子たちのパワーがすごくて、生き生きとしていました。私もそれに乗っかってあげたかったし、もっと引っ張ってあげたい気持ちが強くなりました」。ずっと求めてきたコートの雰囲気、そして見たかった景色だった。 勝てなかった以上は、胸を張って「収穫」とは言いにくい。それでも笑顔の花を咲かせるための「種」は手にした。試合会場を後にする際、松岡は大﨑をはじめ、吉野優理(24)や西川吉野(21)ら今大会をもってチームに別れを告げる選手たちの名前を出し、感謝の言葉を口にした。「V(リーグ)での経験が長くて、戦術的なこともそうですが、局面に応じた声がけ一つ取っても、私の中にはなかった『バレーボール』を学ばせてもらいました」。顔ぶれが変わっても、守らなければいけない「伝統」がある。「誰もが『勝ちたい』という気持ちを持っています。その思いを練習でどれだけ表現して実行できるか。それができれば、必ず強くなります」。逆境下での愚直な取り組みが新たな力を生み出していく。新生東レへの道を切り開くのは、背番号「19」の笑顔と信念だ。(西口憲一)
西日本新聞社