「天才の狂気…傑作の日本アニメ!」思考が活性化するパズル映画(3)。圧巻の冒頭…脅威の画力で実現した世界的名作
今回はパズルのように緻密で複雑なストーリーが特徴の、観るだけで頭が良くなりそうな作品を5本セレクト。列車爆破阻止のミッションに挑むタイムリープ、記憶喪失の男と身に覚えのない殺人…。予想できない展開や幾通りも可能な解釈に、脳がフル回転する作品たちを紹介する。今回は第3回。
『パプリカ』(2006)
上映時間:90分 製作国:日本 監督:今敏 脚本:水上清資、今敏 キャスト:林原めぐみ、江守徹、堀勝之祐、古谷徹(蒼月昇)、大塚明夫、山寺宏一、田中秀幸、こおろぎさとみ、阪口大助、岩田光央 【作品内容】 精神医療総合研究所に勤める主人公・千葉敦子は、「夢探偵」パプリカとして他人の夢に潜入して治療を行うサイコ・セラピスト。ある日、研究室から他人の夢を共有できる補助装置「DCミニ」が盗まれたことをきったけに、研究員たちは次々に奇怪な夢を見るように。謎の解明のため、パプリカは夢の世界へと繰り出す。 【注目ポイント】 本作は、『PERFECT BLUE』で知られるアニメ監督・今敏の長編アニメ作品で、筒井康隆の同名SF小説が原作。アニメ映画では、宮崎駿、押井守らに続き、世界3大映画祭であるベネチア国際映画祭のコンペティションに選出されるという快挙を果たした作品でもある。 物語の性質上「映像化は不可能」とされてきた『パプリカ』。監督の今は、そんな原作を、脅威の画力で映像化する。特に冒頭のサーカスのシーンは圧巻。うごめく有象無象のヒト・モノは、原作小説のヒリヒリとした狂気を見事に再現するとともに、「Animate=命を吹き込む」を語源とするアニメーションの底力を感じさせる。 さて、今は、その後46歳の若さでこの世を去り、本作が遺作となった。本作の世界的な評価を考えると、彼の夭折は日本アニメ界の損失であり、あまりにも惜しい。
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