松村北斗&上白石萌音、再共演で新たな発見 “15分後に一変する世界”を共有した2人【インタビュー 】
友達でも恋人でも、ましてや家族でもない。それでも自分のことを理解し、信じてくれる存在がいてくれたら――。そんな奇跡のような出会いと周囲の人との関わり合いを描いた、瀬尾まいこ氏の小説『夜明けのすべて』が、三宅唱監督によって松村北斗(SixTONES/28)と上白石萌音(25)のW主演で実写映画化(2月9日公開)する。第74回ベルリン国際映画祭【フォーラム部門】 に正式出品が決定し、世界から注目を集めている本作。NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(2021年後期)で壮絶な時代を生きた夫婦を演じた2人が、再共演でまったく違った関係性を築き、そこで互いについて新たな発見もあったという。 【動画】松村北斗×上白石萌音『夜明けのすべて』ロング予告 同じ職場で働く、PMS(月経前症候群)に悩まされている藤沢さん(上白石)と、パニック障害を抱えている山添くん(松村)。ひょんなことから友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく。職場の人たちの理解に支えられながら、少しずつ希望を見出していく2人の奮闘を、温かく、リアルに、ときにユーモラスに描いている。 ■松村北斗の“丁寧な生活”ぶり 上白石萌音が目撃「犠牲にしがちな部分をちゃんと守っている人」 ――松村さんと上白石さんは『カムカム』以来の共演ですが、物語のなかでは初めて出会う2人。現場に入って、再共演だからこそ波長が合うなと感じたことや、逆に共演から時間が経ったことで変化はありましたか。 松村:再共演だから良かったこと、時間が空いたから良かったこと、どっちもありますよね。上白石さんには安心を感じていたし、勝手にいろいろなことを背負って歩いていける人というイメージがあったので頼りにできるな、と。でも『カムカム』のときは安子ちゃん(上白石の役名)だったから。 上白石:久々にそのイントネーション聞いたなぁ(笑) 松村:そのあと、テレビなどで偶然拝見しながら、原作を読んでだんだん“藤沢さんを演じる人なんだよな”ってグラデーションのように切り替えていきました。 上白石:一度、命がけで生きた時代の2人を演じたからこそ、遠慮せずにいける感じはもちろんありました。『カムカム』は昭和、今回は現代劇で、役柄も全然違うし、年上・年下も逆。まったく違う人として対峙できた気がします。そういえば、夫婦やってたな、前世?みたいな感覚です。夫婦を演じたからこそのものと『夫婦だったっけ?』みたいなまた違った関係性をゼロからつかむことも違和感なくできてうれしかったです。どちらの役でも、しっくりきたし、どちらも心地が良かったです。作品のなかにちゃんと入れたんだなと思います。 ――お2人がまとっている空気感がとても似ている印象を受けました。実際に、撮影しながら似ているなと共感できるところはありましたか。 上白石:すごくコアなことなのですが、“人に急に知られていくこと”に対してどう思うかについて話したことがあるんです。私たちは『わ~い!』となれない2人なんです。 松村:話の発端は朝ドラの話から、放送15分前の自分と、15分後の自分は、自分からしたら何も変わっていないのに、世界はいきなり変わる。いきなり『(自身が演じた)稔さん』が注目され、1週間経てば街なかでも『稔さん』と呼ばれたりする。自分は何も変わっていないけど、“稔さん”という役が魅力的だったから『彼(自分)はすごい俳優さんなんじゃないか』という目を向けられ始める。『彼はすごくいいお芝居をした』と言ってくださる方もいるけど、自分はまだ何も変わっているわけではない。周りの人にとっての自分だけがすごく上に行っちゃって、怖くて怖くて仕方ない。 上白石:それに対しておびえているのが同じで『めっちゃわかります』と響き合っていました。怖いですよねって。 松村:認められた!じゃなくてね(笑) 上白石:違う、違うって(笑)。だから『カムカム』の放送中もきっと同じ思いを抱いて過ごしていたんだなとわかったりして、そうだよねと思えました。朝ドラの撮影中はまだ放送されていなくて世間の反応もわからないままやっていたので。“深夜のような暗さ”の共鳴でしたね(笑) ――人見知り同士な一面も似てますか? 松村:上白石さんは、勝手に人見知りではないと思ってたので。 上白石:いやいや、静寂が怖い感じとか松村さんと、同じです。 松村:人見知りっていくつかパターンがあって、僕は間が空いた瞬間が怖くて仕方ないから矢継ぎ早にしゃべってしまうのですが、『私もそうです』って。 上白石:今回の撮影でも始めの方はそのパターンで会話が続いていた。でも、それがいつからか山添くんと藤沢さんのような感じになっていきました。 松村:自分の話に満足したら黙って、話したくなったら話して。『それこそ』『でも』って切り出したかと思えば、実は昨日話した話題の続きだったりした(笑) 上白石:完全に山添くんと藤沢さんの影響ですね。ある意味、その時期は山添くんと藤沢さんだったのだと思います。 ――今回、共演して知った互いの新たな一面はありましたか。 上白石:役者さんとしてたくさんあることは、置いといていいですか?(笑) 松村:いいです、いいです。褒めてもらえるならなんでも(笑) 上白石:現場でみんながお弁当を食べているなか、端の方で野菜をムシャムシャ食べていたことにびっくりしました。『持ってきたんですか?』と聞いたら、朝起きて準備して、野菜足りないなと思って、お弁当箱に入れて持ってきたとおっしゃっていて。しかも、いつも水筒も持っていて、ちゃんと生活をしているな、と尊敬しました。 松村:そうでしたね、“丁寧”でしたね(笑) 上白石:私も水筒を持とうと思って静かに真似しました。 松村:寒かったですから、あたたかいよもぎ茶を持ってきました。 上白石:レベルが高い(笑)。忙しいと犠牲にしがちな部分をちゃんと守っている人なんだ、とより尊敬が増しました。 松村:血液検査の結果、鉄分が少なかったようだったので、レタス類とサラダほうれん草をよく持って行ってました。よもぎ茶には造血作用があるんです。山添くんを演じるために、体重を落としていたので野菜多めの食生活をしていました。 ――松村さんは上白石さんについて新たなに知った一面はありましたか。 松村:実は、『カムカム』の頃はそこまで長い時間一緒にいたわけでもなく、印象を聞かれても『本当にすばらしい方です!』とよく言うような感じだったんです。でもジョークを言ったりもしますよね。 上白石:つまらないやつだと思われてたんですか?(笑) 松村:あまりふざけたことを言うと呆れられるかと思ったら、むしろジョークのほうが多かった(笑)。ときにはウィットに富んだ会話もありました。 上白石:やるじゃん?って(笑) 松村:上品でセンスの良い笑いの方。だんだん会話も盛んになってくると、大笑いするようなジョークではなくクスクスと、面白かったな、と思わるような会話も増えました。こういう感じなんだ、というのがありました。会話の仕方がわかりました。 上白石:松村さんの話が良く練られているんです。1回ラジオで話されたものだったりして、悔しくて。 松村:いくつかラジオと同じ話を持ってくるという(笑)