「シャネル」がパンタンの化粧品開発研究所を初公開 ココ・シャネルの哲学を体現する“統合美”戦略とは?
研究所には約300人の科学者が在籍する。ナタリー・ヴォルペ(Nathalie Volpe)=インターナショナル・イノベーション研究開発副社長は「彼らは美の多様性を実現するため科学とイノベーションを駆使して安全性、性能、卓越した効果を兼ね備えた商品を開発するという使命に日々取り組んでいる」と語る。
オープンイノベーションを推進し
スタートアップ企業と連携
近年、同社はオープンリサーチとオープンイノベーションを融合し、最先端の分野で研究を行うスタートアップ企業や大学、原材料サプライヤーとの協業にも積極的だ。皮膚や脂肪組織の高度な3Dエンジニアリングを手掛けるラボスキン・クリエーションズ(LABSKIN CREATIONS)と協業し、3Dバイオプリントによる人工皮膚の開発に成功した。また、皮膚の内部構造を高解像度で見ることができるイメージング装置を提供するダマエ・メディカル(DAMAE MEDICAL)や、菌根菌(菌根を作って植物と共生する菌類)に着目し効果的な生物学的ソリューションを開発するバイオ企業マイコフィト(MYCOPHYTO)などとも協業している。ネットワークを拡大しながら、製薬や食品、テクノロジー、生物医学の分野に加えて、最先端の塗料や自動車、光学、印刷、セラミックといった産業からもインスピレーションを得ているという。
植物研究においては、原料供給の拠点となる自社農園、オープンスカイラボラトリーの存在が欠かせない。同ラボラトリーは、コスタリカ、仏南西部のゴジャック、仏南アルプス、マダガスカル、ブータンと世界の異なる気候地帯の5カ所に展開する。マダガスカルのラボラトリーでは、「シャネル」のエイジングケアライン“サブリマージュ レクストレ”に主成分であるヴァニラ プラニフォリアを採取している。同ラボラトリーでは植物の栽培だけでなく、社会的・環境的イノベーションの実験的取り組みも行う。基本理念には、生産者と共にフェアトレードのサプライチェーンを構築し、生物の多様性や土壌を保護すること、「シャネル」が使用する植物に関連する無形文化遺産を保護することなどが含まれている。