農業の他に得意分野生かす「半農半X」 自治体も後押し
音楽活動続けるブドウ農家目指す 広島県三次市の木村恵太郎さん
農業に携わりながら、農業以外の得意分野や希望する仕事も並行して暮らす「半農半X」を実践する人が増えてきた。農村地域の新しい生き方として着目し、移住者を呼び込むきっかけにしようと、実践を後押しする自治体も出てきている。 広島県出身のギタリストで、テレビCMの楽曲を手がける作曲家の木村恵太郎さん(44)は、音楽活動を続けながらブドウ農家を目指し、同県三次市で研修に励む。ブドウの生命力に触れ、自身の管理によって作物が育っていくさまを目の当たりにして刺激を受け、音楽の感性にも磨きをかけて独自の「半農半音楽家」を目指す。 「手をかけるほど味わい深くなっていくのは農業も音楽も同じ」 たわわに実った「シャインマスカット」が並ぶ畑で、休憩中にギターを奏でながら木村さんはそう話す。 広島市出身の木村さんは東京を拠点に10年間、音楽活動を続けた。妻の智子さんがボーカル・作詞を担当し、全国のライブイベントを回った。 農村地域の音楽ライブにも呼ばれ演奏する中、「農家さんとの交流や味わった農産物」が農業に興味を抱くきっかけになった。 転機は39歳の時。子どもが2歳となる中、「自然豊かな場所で子育てと音楽、農業がしたい」と一念発起。広島への移住を決めた。 三次市で新規就農希望者を育成するJAひろしま出資型農業法人の(株)JAアグリ三次の農業研修生に応募。ブドウ農家を志し、2年目は市内の農家で「シャインマスカット」の栽培を研修。今年3月に全課程を修了し、独立する予定だ。 作曲家として自然をテーマにした楽曲を手がけてきた。自らの手で剪定(せんてい)などの管理をしながら、実がついて大きくなっていくブドウと日々接することで「感性が刺激され、これまで以上に自然体で音楽と向き合えるようになった」と実感する。 研修の合間にCM楽曲の制作やライブ活動、音楽教室も開く。「音楽と農業の相乗効果を追求したい」と力を込める。