なぜ『【推しの子】』には“【】”が付くのか? 考えられる2つの理由とは
最後に残った素朴な疑問
マンガ『【推しの子】』が多くのファンに惜しまれながら約4年半の連載に幕を下ろしました。これまでの因縁に決着がつき、キャラクターの今後も示されました。しかしひとつ素朴な疑問が残ります。なぜ、タイトルに【】がついているのでしょうか? これは原作マンガが完結してもなお、残されている謎のひとつです。 【画像】え…これは反則でしょ? コチラが沼に落としにかかってくる【推しの子】ヒロインたちです(3枚) ●この世は舞台、人はみな役者 これはイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『お気に召すまま』に登場する世界的な名台詞です。シェイクスピアは西洋文学界における古典中の古典で、その影響を受けていない近代文学は存在しない、とまで言われるほどの巨匠です。 『【推しの子】』もまた、第1話の冒頭で「この物語はフィクションである」「というか」「この世の大抵はフィクションである」と述べており、極めてシェイクスピア的です。いつの時代も誰もが何かの役を演じている、という現実認識は共通しているのでしょう。 ただし『【推しの子】』ではアイドルという存在が「演じるもの」のシンボルとして明確に描かれています。アイドルの虚構性については、アイドルブームが始まった昭和の頃から語られ続けており、ファンですら同意するでしょう。しかし本作では虚構なのはアイドルだけではない、という視点に立ち返っているようです。 ●あえて答えなかった赤坂先生 原作者の赤坂アカ先生はTUTAYAオンラインのインタビューのなかで、タイトルに込められた意味について下記のように回答しています。 1巻を読めばわかるんだけど“推しの子”には2つの意味があって、1つ目が「好きなアイドルを推す」という意味で、2つ目が「推しているアイドルの子ども」という意味。もともとアイドルをテーマにした作品を描きたかったから、このグループ名にしたんだよね。※1 赤坂先生はタイトルに【】がついている理由については回答を避けています。そこで、どういうときに【】を使うのか、という文章作成上のルールから考えてみます。 ●【】は役の名前 括弧(かっこ、parentheses、brackets、パーレン)とは、任意の文字や数字などを囲って他の部分と区別する記号です。その種類や使い方には一定のルールがあります。 例えば本コラムで使われている『』二重かぎ括弧は、署名や曲名、作品名などを表す際に使います。そのため、多少違和感があるものの『【推しの子】』と表記しています。 『【推しの子】』がくくられている【】の正式名称は墨つき括弧といい、通常の()よりさらに強調したい部分に使うことが多い記号です。つまり他の部分と強調して区別されているという意味が込められているのは間違いありません。 しかし【】の意味はそれだけではないでしょう。そもそも【推しの子】とは転生した「アクア」と「ルビー」のことです。ふたりは前世の記憶や人格があるにもかかわらず、自ら望んで「星野アイ」という自分の【推し】の隠し子として振る舞っています。つまり、ふたりは虚構の存在になる前から【推しの子】という役を演じているのです。 本作ではアイドルとは演じるものである、という点が繰り返し描かれています。【】の意味とは、キャラクターが演じる役の名前ではないでしょうか? 演技に演技を重ねている点で【推しの子】は強調されるべきタイトルテーマだと言えます。 なお、気になるアニメは3期の制作が決定されていますが、詳細は不明です。続報を待ちましょう。 ※1 引用:『【推しの子】』タイトルに付けられた【】の意味とは? 1巻は伏線だらけ!!【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】 ※記事の一部を修正しました(2024年12月14日11:22)
レトロ@長谷部 耕平