【視点】「自国は自国で守る」意識を
また在沖米軍の米兵による性的暴行事件が発生した。昨年6月の事件を受け、県警と県の情報共有体制が見直されたあと、性犯罪事件の情報共有は2件目だ。 昨年の事件を受け、日本政府や県は米軍に強く綱紀粛正を求めてきたが、米軍には学習能力がないのだろうか。強い憤りを感じる。玉城デニー知事は「在沖米軍内の規律のあり方が問われる深刻な事態」と非難した。 こうした事件の続発は、自国の安全の大部分を米国に依存する日本の現状に根本的な原因がある。「自分の国は自分で守る」という、どの国でも当然持つべき意識に改めて立ち返るべきだ。 ただ防衛力の抜本的強化を考える時、少子高齢化の流れを受けた自衛隊の人員不足が大きな課題として立ちはだかる。定員の充足率は現在、90%にとどまる。 石破茂首相は昨年10月から自衛官の処遇・勤務環境の改善に向けた関係閣僚会議を4回開催し、自衛官に対する給与や手当の引き上げ、宿舎など勤務環境の改善、再就職先の拡充などの基本方針を打ち出した。政府を挙げて、自衛隊を魅力ある職場とするための努力が求められる。 マンパワーの不足を先端技術で補う取り組みも必要だ。防衛産業の育成も待ったなしの課題である。防衛産業の技術が他部門に転化されされば、日本経済全体の成長にも好影響がある。 政府は2022年12月の防衛3文書で防衛生産基盤の強化を進める方針を明示した。人員不足の傾向は民間も自衛隊も変わらない。あらゆる手段を駆使し、少数精鋭の体制をいかに構築するかが問われる。 防衛戦略で日本が主体性を維持しながら、日米同盟の維持強化を図るのは、現在の国際情勢下では当然のことだ。米軍基地負担の負担軽減は、日米同盟の安定的運用のためにも必要である。 そのためにも、まずは日米間で既に合意している米軍基地の整理縮小を計画通り進めなくてはならない。 県が米軍普天間飛行場の辺野古移設反対に拘泥することが、在沖米軍基地全体の整理縮小にも悪影響を与えている。合意事項を一つひとつ片付けていく中で、新たな負担軽減の展望も見えてくるはずである。 他国の軍隊である米軍と、日本の法制度のもとにある自衛隊の基地を同じ「基地負担」というカテゴリーで同一視するのは誤っている。自衛隊は「負担」ではなく、日本人の安心安全に必要不可欠な存在だ。 玉城知事は昨年末の報道各社のインタビューで「米軍の機能や規模が縮小されないまま、日米共同訓練の増加とか自衛隊の配備拡張が進められることは沖縄の基地負担の増加につながる。負担軽減は米軍と自衛隊の両方から考えていく必要がある」と述べた。誤解に基づく発言であり同意できない。