【漫画家に聞く】不思議な法則で入れ替わる隣人に背筋がゾクリ……思わず人に話したくなる怪談漫画が公開中
どんなにテクノロジーが発達してもなくならない怪談。科学では説明のつかない話に人は魅了され続けている。SNS漫画『不思議な法則で入れ替わる隣人の話』もその類のひとつで、隣人の不思議な挙動に不気味さを覚える物語だ。 背筋に冷たい汗をかく怪談漫画『不思議な法則で入れ替わる隣人の話』(『無惨百物語』) 本作は黒木あるじ著『無惨百物語』のマルオさん(@f90c89d79366434)によるコミカライズ連載作。幅広いトピックの怪談をオムニバス形式で収録した原作をどう漫画に仕立てているのか、話を聞いた。(小池直也) ――本作の反響はいかがですか? マルオ:まだ直接的な感想はそこまでないのですが、作品を知人に見せた時は「さぶいぼ出たわ」と言ってもらえましたね。怪談の魅力って短時間でゾクっとするような体験ができるところだと思っているので、そういう反応はありがたいです。 ――マルオさんから見た『無惨百物語』とは、どんな作品か教えてください。 マルオ:バラエティ豊かな実話の怪談が集められた作品だと思います。村のなかにある不思議な地蔵の話だったり、いわく付きの因習だったり、近所のアパートで妙なものを見た話だったり、昔の軍隊の話だったり……。 とにかくパターンが多いので、読んでいて楽しかったですね。自分が好きなタイプの怪談を必ず見つけられると思います。それでいて、怪談の語り手としても活躍されている黒木さんの、切れ味鋭い語り口も特徴かなと。 ――原作をどのように漫画に落とし込んでいるのでしょう。 マルオ:原作では「不安な気持ちを生み出す短編」が対談のなかで展開していくので、それをなるべくそのまま表現できたらと思っていました。ただ文字や話による恐怖感の演出は想像の余地があるのがポイントだと思うんですよ。それに負けないような漫画を目指しています。 例えば、物がつぶれる音のイメージを漫画にするのは難しかったですね。あとは怖いものをぱっと見た時のリアクションは叫んだり、無言になったり色々あるじゃないですか。それが怪談話でも生々しさを感じさせるので、それを表現するように心がけました。 ――やはり原作があると難しい? マルオ:といっても割と自由に描かせてもらっているので、そこまで苦労が大きいということではありません。「自分だったら、こう描く」というアイデアはオリジナル漫画にはない部分を楽しんでいます。 ――自身のなかで気に入っているエピソードはありますか。 マルオ:『不思議な法則で入れ替わる隣人の話』は気に入っています。友人からも「隣の部屋に住んでいる人が何を考えているかわからない」という話を聞きますし、リアルな不気味さを意識しました。特に住人が口に指を当てているコマはこだわっていますね。あとは色々な偶然が重ならないと起こり得ない不思議な話、でいうと第8話の詩集の回も印象に残っています。 ――原作者の黒木さんとは内容を打ち合わせたり? マルオ:直接の打ち合わせはしていないのですが、僕の過去作を読んでくださって「高架下に幽霊が出る話が面白かった」と言ってくれて嬉しかったです。連載も読んでくださっています。 ――今後、連載はどのように描いていきますか。 マルオ:1話完結になるように作っていますが、全体を通して読んだ時に1つの筋が通っているような流れを作れたら。黒木さんの原作で作品としては完成していますし、改めて漫画として描くことで世界観に新しさを付加できるように頑張ります。 今も昔も怪談って基本は変わってないと思うんですよ。スマホやアプリなどの現代怪談も怖いですが、昔聞いた怖い話は今聞いても怖いですから。大切なのは話の意外性だったり、空気感や生々しさ。それを漫画でもっと表現していけたら。
小池直也