『虎に翼』「女性が法律を学ぶなんて!」法事で不在だった母から入学を厳しく反対されるも…寅子モデル・三淵嘉子が進んだ明治大学の<先駆的姿勢>
24年4月より放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。伊藤沙莉さん演じる主人公・猪爪寅子のモデルは、日本初の女性弁護士・三淵嘉子さんです。先駆者であり続けた彼女が人生を賭けて成し遂げようとしたこととは?当連載にて東京理科大学・神野潔先生がその生涯を辿ります。先生いわく「嘉子は明治大学専門部女子部法科への進学を考えたものの、周囲からは強く反対された」そうで――。 【書影】嘉子が生涯を賭して成し遂げたかったこととは?『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』 * * * * * * * ◆進路への反対 嘉子は、東京女高師附属高女を卒業した後、法律の勉強をしていこうと思うようになっていました。 そのために、明治大学専門部女子部法科への進学を考えたのですが、嘉子が受験に必要な卒業証明書を取りに行くと、将来を心配した先生に強く反対されてしまいました。先生はおそらく、女性が法律を学ぶなんて、と思ったのではないかと想像されます。 日本に近代的な法律学を学ぶための学校ができたのは明治時代のことです。 帝国大学に法科大学(法学部)が置かれたのに加えて、いくつもの私立法律学校が創設されていきました。明治大学の前身にあたる明治法律学校は、その中心となる学校の一つでした。 なお、フランス法について学ぶ明治法律学校、東京法学校〈現在の法政大学〉、イギリス法を学ぶ英吉利法律学校〈現在の中央大学〉、東京専門学校〈現在の早稲田大学〉、アメリカの影響が大きい専修学校〈現在の専修大学〉の5校のことを特に、「五大法律学校」と言います。 嘉子が進路を考えているこの昭和の時代には、これらの法律学校は大学になっていました。
◆日陰の道 さて、嘉子は先生の反対を押し切って明大女子部に入学手続を済ませたのですが、その時法事でたまたま東京にいなかった母ノブが、帰京した後でそのことを知り、やはり激しく反対しました。 ノブは後に、熱心な理解者・応援者になってくれるのですが、この時は、将来自立できるかもわからないし、結婚できなくなると心配したのです。 しかし、開明的な父貞雄が嘉子の背中を押してくれ、一緒にノブを説得してくれました。こうして、1932(昭和7)年4月、嘉子は法律の勉強を始めることができたのです。 当時は、女性が法律を勉強するということは、「変わり者」というイメージをかなり持たれるものだったと嘉子は後に振り返っています。 嘉子自身、友人から驚かれたり、呆れられたり、「こわい」と言われたこともありました。 日陰の道を歩いているような悔しさが、嘉子の心を襲うこともありました。 嘉子は後に、教育における差別こそが戦前の男女差別の根幹だった、人間の平等にとって教育の機会均等が出発点として重要であると述べていますが、当時はそのような差別を実感することもたびたびであったようです。
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